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お嬢様は彼女らの退場を知る

※短編を少し修正したものです。内容は変わりません

※短編版は11/30に削除予定です。

 どうしたのよそんなに慌てて。

 今日の報告書には目を通したわよ。

 先月買い取った土地、先行投資した甲斐があったわね。

 地熱があるから腐葉土を作りやすいかと思っていたけど、まさか温泉掘り当てるなんてね。

 少し郊外だけど、山は近いし、少し走れば海もある。

 のんびり疲れを癒したい人にはいい立地だわ。

 建設を始めると周りにも同じように立てられる危険性もあるわね…。

 近くの山の権利者は有閑マダムだから貴方の顔が使えるわね。

 山ごと土地を確保できるなら先にそちらから…って何よそれどころじゃないって。

 これ以外にも仕事は有るんだから、話をするなら簡潔にお願いね。


 そうそう、前にあなたが話してた『ぽっぷこぉん』の試作品が出来たのよ。

 乾いたのトウモロコシにあんな使い道があったなんてね。

 色々な味付けが出来るのでしょう?

 頭から絞り出して味付けを全て思い出せと言ったのを忘れたの?

 話がそれてるって、さっさと話さないあなたが悪いんじゃない。

 で、なんなの?


 …そう、とうとうあの人達は捕まったのね…。

 早かったと言うべきか、遅かったと言うべきか。

 『悪役』をやり終えたのがとても昔のようだわ…。

 次の王は遠縁の方?ああ、やっぱりそうなのね。

 血の繋がりはだいぶさかのぼらなければいけないから、証明に時間がかかったのかしらね。

 今度辺境の領主様にお手紙を書きましょう。

 あの方の現状と今後の事も気になるけれど、あの方が国に残るのなら悪いようにはならないでしょう。


 ん?何やら騒がしいわね。何かあったのかしら?

 見に行ってみましょう。

 そんなに心配しなくても大丈夫よ。過保護なんだから。

 心配するならいつも傍にいればいいでしょ。


 あらあら、何かと思えばそこで捕らえられているのは元婚約者様じゃないですか。

 このような所までなんのご用事が?

 もう二度と会うことはないと思っておりましたが。

 っていうか、ここにいて良いのですか?

 あの子が幽閉された話はここにも届いていますよ。


 はぁ、私が?あの子を?貶めた?

 裏で反乱をまとめていたのは私だろうと?

 魔術師のお父様である辺境の領主とも繋がっていたのは分かってる。

 上手く誑し込んだものだ…。

 国から追い出したことを恨んでいるんだろう…。

 今すぐ罪を告白し、彼女を檻から出せ…。


 …何を言ってらっしゃるのかしら?

 ねえ、分かる?そうよね、意味不明よね。

 これが『キチガイ』というものかしら。

 使う所これであってる?良かった。

 それで、証拠があってのたまってらっしゃるの?


 あれだけ悪事を働いていたのだからお前だろう…。

 追い出したのにこんな贅沢な生活をしているのが証拠だ…。


 なんか聞くのもバカバカしくなってきたのだけれど。

 ええ、私は汚職に改ざん、あの国の馬鹿な貴族相手に悪事をいたしましよ。

 ですが、私が出て行ったあと被害をこおむったという貴族ことは調べましたの?

 私、屋敷をお返しすると同時に色々と残していったのですが。

 まさか見ていないんですか?

 私の残したものなど触れたら汚れる…って…。

 呆れた…まさかそこまでだとは思っていませんでしたよ。

 でもおかしいわね。私の残したものを利用した形跡があったと報告は聞いていたのだけれど。

 …そういえば、辺境の領主様が良い情報をありがとうと言っていたわね。

 私から提供したことは無かったはずなのにって思っていたけれど、そういう事だったのね。

 あの方が有効活用してくれたのなら本望だわ。


 やはりお前が黒幕か…って、どこをどう解釈したらそうなるかしら?

 はぁ…言っても無駄な気はしますけれど、私あれ以来あの国に入った事もありませんわよ。

 ええ、一歩も。


 支店?

 アレは普通のお店ですよ。

 まさか…私が関わっているからと何かしたのではないでしょうね。

 執事長!急いで確認して頂戴!!このボンクラができることなどたかが知れていても何か困っているかもしれないわ!

 報告書には治安が悪くなっても被害は出ていないと書かれてあったし、売上も赤字になっていないけれど。

 やはり紙の上だけでは分からないものね。自分で視察に行けないのは辛い所だわ。

 …ん?王権が変わったら見に行けるようになるかしら。でも悪事を働いたことに変わりわないわけだし。

 うーん…。ちょっと働きかけだけでもしてみようかな。あの国が嫌いなわけではないし。

 ねえねえ、貴方ならすんなり行けるようになる可能性が高いから行ってみない?

 にっこり笑っていれば怪しまれないわよ。その顔なら。

 …私の傍から離れたくないなんて…ほんと、過保護ね。


 あ、ボンクラが居ることを忘れていたわ。

 はぁ?ボンクラにボンクラと言って何が悪いのよ。

 私と初めて顔を合わせたとき何と言ったか覚えている?

 “父親と顔だけが取り柄の小娘”と言ったのよ。

 思ったことを口にされるのは怒るのに、自分は口にして良いとでも?

 ああそうね、それだけでも分かっていればこんな事にはなっていないわね。

 言うだけ、無駄だったわ。


 仮に私が戻ったとしても状況は変わらないわ。

 だって今回は黒幕なんかじゃないんですから。

 私はとっくに舞台から退場いたしました。

 今更また上がることなんてするわけないじゃない。


 ほらお迎えがきましたよ。

 舞台は終わりました。


 あなたも、彼女も、退場の時間です。

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