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領主は彼女らの退場を望む

※短編を少し修正したものです。内容は変わりません

※短編版は11/30に削除予定です。

 やぁいらっしゃい。

 君の評判は辺境のこの地まで届いているよ。

 どうせ悪評だろうって?

 そうだな、次期王女を貶めようとしたとか、英雄の娘であることを笠に着て傍若無人とかかな。

 後は…商品を安く買い叩いて高く売っている悪徳商人とかかな?

 ははっ。そんなにむくれないでくれ。

 君が正当な商売をしていることは知っているよ。

 上手く品を売り込めなかった者や競り負けた同業者のやっかみだよ。


 王都から出て行った時の話も聞き及んでいるよ。

 終始にこやかに退場をしたそうじゃないか。

 追い出されるのに笑っているなど、英雄一家は追放されておかしくなってしまったのだとの噂だ。

 おや、してやったりという顔だね。

 なるほど、そう思われるように笑っていたのか。

 確かにその方がこの国に巻き込まれる危険性が減って良いね。

 もう国民は追放された君たち英雄一家より見つかった王女様のお披露目のほうが興味があるようだよ。

 市井で育った王女様だから、期待をしているのだろう。期待などするだけ無駄だと思うがね。


 バカ息子の事では迷惑をかけた。申し訳なかったね。

 魔力が強く、始めは学ぶ意欲もあるから学園に送ったが、まさかこんな事になるとは…。

 今や学ぶことをやめ、ただ王女のそばで無駄に魔力を見せびらかしている。

 力を誇示し、力で人を抑えつけようなどとは恐怖と憎しみばかりが生まれてしまう。馬鹿馬鹿しい限りだ。

 お目付け役から君と敵対していると初めて聞いたときは冷や汗をかいたよ。

 君が貴族位を捨てるために色々と画策していたことは知っているが、まんまと息子が引っ掛かるとは想像していなかった。

 妻から託された息子だ、厳しく育てたはずなんだがね。

 諌めるために手紙を書いたが、返事には『彼女だけが化け物扱いをしなかった』と書いてあった。

 私は何と書いてあるのか理解するのに時間がかかってしまったよ。


 確かに、あの子を化け物扱いする者もいる。

 だが、私もこの屋敷の者も誰一人息子を『化け物』と呼んだことはない。

 息子の魔力が強大だったから、その力に妻が耐え切れずに出産時に亡くなったのは事実だがそれを責めたことなど一度もない。


 …妻は最後に息子に「ありがとう」私に「ごめんなさい」と残していった。

 息子には生まれてきたことに感謝を。

 私には置いてゆくことに謝罪を。


 魔力が多すぎると小さな体が耐え切れないこともあるから慎重に育てなければいけない。

 成長をして、魔力が暴走しないようになっても巨大な力は畏怖されることだろう。

 苦難の多い人生になることはわかっていた。

 それでも、堂々と生きていけるようにと躾けてきたが…私のやったことは単なる親のエゴだったのやもしれん…。

 …すまない。空気を悪くしてしまったね。

 悲しそうな顔をするな。君がそんなに思い悩むことではない。

 これは、我が家の問題だ。


 そうそう、つい最近王都にいる私の友人が王女の教育係に任命されたんだよ。

 あの王女ときたら、贅沢な食事はするな、華美な服を作るな、税を下げろと喚いたらしい。

 曰く、税金で美味しいものや綺麗な服を着るのは酷い事なんだそうだ。

 友人は真面目だからね、夜会や茶会などの必要性、服装や装飾から見られる政治的観念、集めた税の使い道を懇切丁寧に教えたらしい。

 それが息子達には王女にきつく当たっているように見えたようだ。

 不敬罪だなんだと騒ぎ立て、王女を妬んでるだの、貶めようとしてるだの、果ては王女の気を引こうとしていると言われて、結局教育係を外された。

 真面目で通っている友人だから周りは濡れ衣だと知っているが、王女の周りは何を言っても向こうの勝手な解釈で返してくる。

 何とか王女に誤解だと伝えたが、王女は「私はやめろなんて言ってないわ」と泣き出した。

 それを見た息子たちがまた騒ぎ出す。

 止められるはずの宰相も王も王妃も泣いている王女を可哀そうにと慰めるだけ。

 今では王女のいう事を肯定する者以外近づけない徹底ぶりだそうだ。

 その裏では彼女のお披露目の為にとドレスと宝飾品を必要以上に作っていることを王女は知らない。

 呆れたものだよ。


 …私には領地があり、ここには領民がいるからこの国をこのまま捨てることが出来ない。

 だが、最悪になる前に退場させるための準備をしておくことは出来る。

 多かれ少なかれ今の状態に不満を持つ者はもう出てきている。

 王女が見つかってこれからお披露目というのに、早くも崩れ始めている脆い泥船だ。

 その時になれば息子には私から引導を渡すつもりだ。

 これも、親の務めだろう。


 君とは今後も商売相手としてお付き合い願うよ。

 なに、もし私がいなくなろうとも引き継ぎはしっかりとしておくから心配しないでくれ。

 ん?王都に支店を作ったのかい?わざわざ出て行く前に?

  何かあればそこへ…とは、君は相変わらず甘いね。

  前から計画をしていた事だと言ってもその支店を用意した理由はこの国の事が心配だからだろう?

 それは国を出て行く罪悪感から出た理由だとしても、きっと君に救われる人々は沢山出てくる。


 退場させる準備は着々と進んでいる。

 この国がいつまでもつか賭けてみようか。


 きっと面白味のない勝負になるだろうがね。

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