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父親に生え際が後退する呪いをかける

お気に入り登録していただいて嬉しい限りです…!

暇なときにでもさらっと読んでいただければ幸いです。


「フリージオ侯と自分の娘についてお話する機会があってね」


 どういうことですか少し早すぎます!と椅子を蹴倒す勢いで言い放った兄をスルーした上で、そんな感じで父親は話をはじめた。それでだなとかあーとかうーとか、やたら言いづらそうにしていて長くなったので割愛。

 要はそっちの娘をこっちの娘の侍女にしてみないかって話だったらしい。“してみないか”っていうのはあくまでもポーズで、つまりは“するよな?当然だよな?うん?”ってことですね了解。怖い。


「どうかな」


 父の目は秒速5mくらいで泳いでいた。このおっさん何でこんな挙動不審なんだ。

 いや確かに、フリージオ侯の機嫌を損ねようものなら社会的に死んだも同然なんだけど。だって格差が、格差がな。にしてもだよ。父親のこれは何ていうか、恐怖心よりも罪悪感が勝ってる感じ。


「興味はありますが。

 ………変な話ですね急に。よもや先方と何かを賭けてゲームなさったとか?」

「そっ!ん、なわけ……」


 全力で声が裏返っていた。呪い倒すぞこのクソ親父。

 ………つうかマジで!?こいつホント何!?いくら仲良いっつったってそれはねぇだろうよアホか!!しかもそれで負けてくるあたり最悪にも程がある!いや接待かも知れないけどそれなら娘賭けたりすんなって話!

 え、親のこれに巻き込まれた結果があれとかイリア可哀想すぎる!!

 


 月のない夜は、背後に気を付けろよ……!!



 溜息を一つ吐くと、びくんと父親が跳ねた。


「イリア、お前まだ11歳だろう、いくら何でもまだ……」

「お兄様少々お静かにお願いできますか」


 客観的に判断するとうちの兄貴は少しシスコンの気があるっぽい。もう15なんだから好きな人の一人や二人見つけて家に連れてこいという気持ちで日々を過ごしている私ですどうも。


「……わかりました、侍女でも何でもやってやろうではないですか」

「イリア!?」


 喚く兄上を軽く睨み付ける。たぶんうちの兄貴は嫁の尻に引かれるようになるだろうと予想。

 まぁ最初から決めてたことですしね。お嬢様の性格改善、ひいては私の安寧の為に!ビバ平穏ビバ安穏。

 父はぱっと顔を明るくした。


「ほんとうかい!なら早速侯に連絡を……!」


 いやもうホントなんて言うか是非とも禿げろクソ親父。母様これと結婚してくれて本当にありがとう多分貴方がいなければもらい手がなかった。母様すごい猛者。

 打って変わって楽しげに食事を再開した父親を内心で睨み付けていたら膝に何かが触った。小さな手。もみじのようだとはよく言ったものだ、この世界にもみじないけど。

 この手でよくヴァイオリンなんて弾いてられる。


「……ローラン?」

「イリアねぇさま、どこかいっちゃうの?」


 美ショタの上目遣いプライスレス……!

 ちょっとこの子本当に私の弟ですか……!可愛すぎるんですけど!しかも若干涙目、うっわー全力で行かないよって言いたい抱きしめたい。ブラコンになりそう。


「ええ、ちょっとね?」

「いつ?すぐかえってくる?どこいくの?」


 う ち の 弟 ホ ン ト 天 使 。 

 


「さぁ、どうかしら」



 母親に似た大きな青の目がじわじわと湿度を増して、すぐにぽろんと雫が落ちた。白くてなめらかな頬を、綺麗な弧を描いて顎にまで滑ってくる。

 うわー。うわーこれは。これは。

 お姉ちゃんちょっと胸きゅんが限界っていうか。心臓が止まりそうな勢いで高鳴ってるんだけどどうしよう。ちょっとイケナイあれに目覚めそうかもしれない怖い。

 可愛い女の子の一人も家に連れてこない兄貴よりよっぽど愛しい。


 美ショタの威力は計り知れません。


 

 で。

 単純計算したら精神はもはや[見せられないよ!]歳だという私をも犯罪者の道に手招きする魔性の弟をひとしきり愛で、一緒に寝ちゃったりなんかした日から3日。

 ねぇ聞いてうちの子寝る時私があげたうさぎのぬいぐるみだっこしてるんだよ超可愛い。

 とにかく3日後。



「やぁイルニアルカ、会えて嬉しいよ」



 例のフリージオ侯とお話の場を設けて下さりやがった父親は本当に爆死しろ。

 馬車で連れてこられたお屋敷がでかすぎて吹き出した。



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