再び、ラピスラズリ
「ワイン、いいよね」
そう言われてうなづいた。
以前から、ビールくらいならつきあったこともあった。しかし、今日から堂々と飲めるのだ。やはり大人の女性という意識が嬉しい。
伸弘の選んだワインはロゼだ。甘味もあり、飲みやすい。料理もおいしいし、勧められるままにグラスを口にしていた。瑠璃はすぐにいい気分になっていた。
そして大方の食事が済むと瑠璃たちの周辺の照明が消され、小さなケーキにキャンドルが灯されて運ばれてきた。周辺の客も、皆がハッピーバースデーの歌を歌ってくれた。
恥ずかしかったが、全世界が瑠璃の誕生日を祝ってくれていると実感していた。
酔いも手伝ってのことだろうが、こんな最高の演出をしてくれた伸弘に感謝し、ずっと前からすごく好きだったかもしれないと思うようになっていた。
そんな最高の時に、伸弘はプレゼントを取り出した。それはラピスラズリのピアスだった。
「あ、きれい。ラピスラズリ」
「そう、瑠璃ちゃんの石だよね」
と、伸弘は瑠璃の反応に満足した様子で言う。
しかし、その時、瑠璃のブレスレットに目が光った。
「えっ、それ、もう持ってたんだ。知らなかった」
今朝、真朱からもらったブレスレットのことだ。
「あ、これ? いつも会う人懐っこい高校生の女の子がプレゼントしてくれたの。彼女の手作りなんだって」
瑠璃は左手を突きだして、伸弘に見せた。しかし、伸弘には、その石自体には興味はない様子だ。彼はそれを誰にもらったのかが気になっただけなのだろう。
なあんだ、女子高校生か、と思っているのがあからさまにわかった。それなら構わない、とばかり、再び饒舌になる。
「この石ってさ、魔除けの効果抜群なんだって。ピアスは、インスピレーションを高めてくれるってさ」
ふぅんと思う。
真朱の言っていたことと同じだ。魔除け・・・・・・。ブレスレットとピアス、これならご利益は十分だろう。最近の奇妙な事故ももう起らなくなるかなと考えた。
「ね、つけてみて」
伸弘にそう言われて我に返った。
今つけている花の形のピアスを外し、伸弘からもらったばかりの瑠璃紺のピアスをつけた。肩までの髪を耳にかけて、伸弘に見せた。彼は満足そうだった。
ラピスラズリ、瑠璃紺の石。自分の色の石なのに、今までそういう事も知らずにいた。これをきっかけに調べてみようかなと思う。