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強力な助っ人?

 烏羽と紫黒、そして瑠璃は都会のど真ん中にある高層マンションに向かっていた。ただ、一緒に来るようにと烏羽に言われたのだ。


「ねえ、このままだと二十三世紀の王妃は存在しなくなるんだよね。王一人でも大丈夫なの? それとも別の人を王妃にする?」

 江戸時代とか他の西洋でも、王と言えば、正室と側室の関係。女がつきものだ。正室がいなくなれば、側室を持つのが殿さまや王様だと思っている。そうしないとその家が続かなくなるからだ。


「いや、オレ達の王はそういうことはしない。王妃の魂を持つ者でなければ、絶対に一緒にならないから」

 紫黒が遠い目をして語り始めた。

「それに子供が世継ぎになるわけじゃないから、王妃も子供を産まなければならないということもないんだ」

「えっ、そうなんだ。世継ぎ騒動で、皆、苦労しているんだよね。後継ぎがいないとか、誰が家を継ぐべきかとかさ」


 烏羽が何がおかしいのか、さっきからくすくす笑っていた。

 瑠璃が睨むと、顔を引き締めて真面目に言う。

「失礼、そういうことを瑠璃ちゃんが言うと実感がこもっているなと思って・・・・。そう、王一人でも国を治めることはできるよ。孤独だけどね。以前にも王妃が三十歳くらいで亡くなった時代もあった。王妃がいればそれだけ心強いけど、大丈夫なんだ。王が亡くなり、生まれ変わるのに数年かかることもある、王が在籍していない時期もあるんだよ。それでもうまくいくように守り役たちが頑張るし、それだけの癒しが送られているんだって」

「へ~え、そういうもんなんだ」

 うまくできていると思う。


「王と王妃は、一緒にいることが公務なんだね」

と瑠璃が言うと、紫黒は小さい子を褒めるようにいう。

「瑠璃ちゃんにしては、物分かりがいいですね」

 瑠璃は、ぷいと顔をそむけた。紫黒はいつも皮肉しか言わない。

 その紫黒が真剣な眼差しになる。

「でも、それはすべて王が元気であればのこと。国も王も健康で、十分な癒しが行き届いていたらの話なんだよ。今、蒼い国は王がいなくなったらやばいことになる」


 瑠璃は、紫黒の言う「やばいことになる」という意味を聞きたかったが、その響きがあまりにも恐ろしく、口をつぐんだ。

 紫黒は、まるで独り言を言うように、さらに続ける。    

「今、王が黒い森を出たら、多分肉体は死ぬ。今のあの人はものすごいエンパスだから。自分の病いもあるのに、他の人の病の苦しみ、恨み、痛みをもろに受けてしまう」

 その言葉の中に聞き慣れない言葉があった。

「エンパスって?」

と、小さな声で烏羽に聞く。


「エンパスはね、人の思考に簡単につながってしまうという共感能力のこと。普通の人にもそういう傾向はあるんだよ。沈んでいる人と一緒にいると、なんとなく、こっちも暗い気持ちになってくる、そういうこと。今回の王は、その能力が人一倍強くてね。国民の心の痛みをわかるのはいいけど、自分もそれをそのまま請け負ってしまうんだ。人を癒す能力ちからも強いけど、自分が受ける苦痛も半端じゃない」


 人の痛みが伝わってくる、そんなことがあるなんて知る由もなかった。確かに瑠璃も、明るい元気な人たちといると元気がもらえる。でも、悲しんでいる人の心も伝わってきてしまったら・・・・確かに一緒に悲しむかもしれない。でも、周りの人はその人を元気づけるように切り替えられるんだと思う。

 悲しみだけでなく、恨み、妬みだったら? それも伝わってくるのだろうか。そんなものに自分が左右されたら、どれが本当の自分なのかわからなくなってしまうだろう。

 瑠璃には、その共感能力エンパスということがまだ、よく消化しきれないでいた。


 紫黒は烏羽にイライラしながら訴えた。

「なあ、烏羽さん。じゃあ、これからどうすればいいんだ。王はなんて言ってる?」

 烏羽は、至って冷静に答える。

「だから、これから緑の女王に会いに行くんだ。今のこの時代に存在している王の魂は、緑の女王しかいないから。シアン王も沙緑しゃりゅう様なら、なにかいい知恵を授けてくれるかもしれないって言ってた」


「緑の女王?」

と瑠璃が聞き返す。

「そう、ビジョンで見ただろう。緑の国を。そこを治める予定の女性が、この二十一世紀にいる。しかも彼女はそのことを知っている。自分が来世には緑の女王として生まれ変わることをね」


 烏羽の説明によると、緑の国は最もこの地球に近い文明を持つらしい。大陸の中でも一番大きい国土を持ち、七つの国の中で唯一、車を走らせているところということだ。


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