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蒼い国とは

「なんか、王妃の魂を隠すように覆っていたモノが、今の涙で剥がれ落ちていってる感じだね」

と、烏羽が瑠璃を見て、そう言った。

 瑠璃自身もそう思った。ずっと何かに覆われていたものが、流れていったような気がする。悲劇なことがわかったが、すっきりとしていた。


「じゃ、こっちも準備ができたし」

 紫黒の言葉に、目を上げた。

「準備?」


「今から瑠璃ちゃんに紫黒が語る。僕が所々イメージを送り込むから、シールドを少しだけ解いて」

「えっ、シールドを少しだけって、どうやって?」

 そういうことはわからない。

「そう思うだけでいい」

「はい」

 言われるままに、そう思ってみた。



「二二〇四年からオレ達は来た。別の地球、別の世界だ。二十一世紀にアセンションが起って生まれたんだ」


 瑠璃の頭の中に、今の地球に似た惑星に見慣れない形の大陸がある景色が飛び込んできた。大きな大陸もあれば、小さなものもある。それぞれが赤、オレンジ、黄色、緑、蒼、紺、紫の色を放っていた。

「そう、これがオレ達の住む蒼い国」


 少し小さな国、蒼い国。その大陸は親指だけが出ている左手のミトンのような形をしていた。

「この飛び出ているところに王宮がある。その周りを覆っている森は黒い森と言われている」


 黒い森。別に黒くはないのだが。確かに他の木が茂っているところと比べると黒っぽいかもしれないけど。うっそうと木が茂っているという程度だ。


「ここは特別な場所なんだ。磁場が極めて高い。我々の能力が最大に発揮できる場所」

と紫黒が言う。

「蒼い国は、他の国よりもこの黒い森が多い。だからそれまで国内に流行り病いなんか発生しなかったんだ。この黒い森には守り役がいて、大体の病気は直すことができるから。今、この森で王も治療を受けてる」


「その・・・・・・王様だけど、治りそう?」

 気になっていたことだ。治ってほしい。自分のまいた種でこうなってしまったのだから。

「今は病状も安定している。でも良くもなっていないし、悪くもなっていない。かろうじて進行を止めているという感じだ」

 今度は烏羽が渋面で答えた。


「治らないの?」

 瑠璃は落胆していた。

「それが大きな問題でね。王妃がいれば癒すことができる。つまり、治せる」

 烏羽の言葉に、るりが顔を輝かせた。

「あ、じゃあ、王妃に治してもらったらいいじゃない? いるんでしょ。二十三世紀にも王妃が」


 紫黒は実に冷たい目で、瑠璃を一瞥した。烏羽はやれやれと首を振り、ため息をつく。

「オタク、バカじゃねえのか。その癒すべき王妃がサビを持ってて、発病したんだ。王や国民を病気にしたんだぞ。そんな王妃が王を癒せるわけねえだろうがっ」

 紫黒の毒舌がさく裂した。

 思わずむっとするが、それもそうだった。そんなことができたらとっくにやっている。この二人もここに来る必要がないのだ。


「王ってのはな、代々同じ魂を持って生まれる。つまり、肉体が滅びるだけで、その魂は転生する。そしてその魂を持って生まれた者が王になる。それは王妃も同じなんだけど、違うのは王が昔の記憶を全部持っているってこと。前世のこと、全部覚えているんだ」

「・・・・すごい・・・・」

 瑠璃がそういうと、紫黒は自分の事のように得意げな顔になる。


「それに王は、自分の死期もわかる。そして生まれ変わるための自分の両親や場所、その時もわかるんだ。それを予言して死ぬ。王宮はその予言に沿って、王が生まれたらその家族ごと迎えに行く。王宮の敷地内に館をもらって、その家族は王が口が利ける三歳になるまでそこで育てる。三歳になったら王として即位され、その家族は生活の保証をされて、どこか静かなところで暮らすって言うのが一般的だな」


 烏羽がチラリと紫黒をみた。その意味は、当時の私にはわからなかった。紫黒が王の弟であることを。その家族とは紫黒の家族のことだと。

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