第1章 4話
生まれて初めての実戦。
当然、格闘の経験等も全く無い。
だけれど。
私がこの世界の救世主となるのなら。
戦わなくっちゃいけない。
うん。
大丈夫。
私には、この力もある。
「いくよ!」
走る。
そのまま当てれば大丈夫。
「やぁ!」
だけど。
私の攻撃は外れた。
「え?」
なんで?
「バカ!腕が伸びきって無いで!!」
あっ。
本当だ。
肘が曲がったまま。
くの字のまま腕を振るったにすぎない。
つまり。
避けられたんじゃなくて、単に届いてないだけだった。
しまった!
「危ない!」
え?
ゴブリンが後ろにいる!
あれ?
いつの間にか、私の後ろからロボさんがいる。
そして。
一刀両断に、ゴブリンを斬ってしまった。
「まったく。素人やとは思たが、ここまでとは」
「すみません」
私も、ただ当てるだけだと思っていたのに。
想像以上に体が動かなかった。
緊張?
「いや。緊張だけやない」
え!?
私の心理を見抜いたような発言。
「あんたはまず、何故戦うのか?その辺りを理解してへん」
え!?
「分かってるわよ。だって、この世界を救うんでしょ?凄い事だよ」
「いいや!全然分かってへん!!」
そんな。
「前の戦いの仲間でな、『ヨーコ』という人がおった。彼女は戦う力は無い、かと言って魔法や能力を使えるとは言えなかった。だけどな。彼女は例え自分の身がどうなろうと仲間を守りたいと。それだけの思いで戦って来た。あんたにはあるのか?覚悟って奴が!!」
覚悟。
確かに。
それを言われると、弱い。
今の私は。
単にアニメや漫画、ゲーム等で良く見かける『異世界を救う勇者』に憧れて、それになろうとしているだけ。
つまり、本気でこの世界を救おうという訳では無い。
「その辺りの覚悟が出来てなければ、この先、間違いなく死ぬで?」
うっ。
それは。
かなり重い言葉だった。