第壱話
第壱話 「崩される家族」
俺の家庭は母親だけだ。
父親は5年前に他の女と家を出て行った。
俺は恨んだ・・・父親の事を。
幸せだった、あの頃の家庭を奪ったのは父親だった。
今となっては、母親にも好きな男が出来たらしく、結構幸せに暮らしている。
俺は母親が幸せになってくれるならば、それでいいと思っている。
5年間も俺のせいで苦しんできた母親が、これからの人生楽しめるように俺も頑張りたいと思ってるし。
「省吾、お前にとっての幸せって言うのは何だ?」
父親は、突然俺の部屋にやってきて、そう問いかけてきた。
正直、父親が何を考えて俺に質問したかなんて、よく分かってなかった。
「幸せ?家族が皆で笑ってらる事じゃない?」
それが普通だと思っていた、家族が皆で笑って、普通に家族団欒を味わえるのが俺にとっての幸せだと思っていた。
それなのに、この話をしてから2週間ぐらいして、父親は他の女と家を出て行った。
俺と母親の残して、自分だけ幸せを味わう為に。
裏切られたと思った・・・。
母親にも俺にでさえ謝る事も無く、月々決まった日に決まった額の養育費やらを送ってくるだけで、今となっては顔すら見る事も無くなった。
別に、俺に謝る必要はないと思う、だけど、母親にだけは謝って欲しかった。
たった、一言
「ごめん」と
言ってくれるだけで良かった・・・・のに
今じゃ、父親がどこに居るのかさえわからない・・・
そんな父親を俺は恨んでいる。