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短編集

邪神竜と畑の守人

作者: 火川蓮
掲載日:2026/05/15

適当に思い付いた話です

朝の光が畑を照らす。

小麦の穂が風に揺れ、鶏たちの鳴き声が静かな空気に混ざる。


男は手にした鋤で土を均しながら、今日も日常を守るための仕事に集中した。

これは、守るべき世界の片隅。

誰かに認められるわけでもない、ただの生活だ。


「……昨日の夜、山の方に変な影が出てた」


隣に立つ仲間の声が小さく響く。

男は顔を上げ、遠くの山を見た。

頂上に、黒い雲が渦巻いている。

光を吸い込むように空気をねじ曲げるその塊――

それは、世界を壊すと噂される邪神竜、エルラカルラの気配だった。


「……来たか」


男は鋤を握り直す。

守るべきもののため、立ち上がるときが来た。

仲間は三人。

鍛冶屋の男は、火と鉄を扱い戦いの支えとなる。

薬草師の女は、仲間を守る知識と力を持つ。

狩人の少年は、食料を確保しつつ、戦闘でも矢を放つ。


日常の延長としての戦力――それが、この小さなチームの強みだった。


「行こう」


男の声に、三人は頷く。

小屋を出ると、風がざわめき、草木がざわつく。

遠くの黒雲は少しずつこちらに迫り、脅威は確実に現実となりつつあった。


谷を抜け、渓流を渡り、山道を登る。

黒い影は次第に形を帯び、巨大な翼と黒い鱗、瞳の奥に世界を嘲る炎を見せ始めた。

生活を脅かす象徴――目の前にそれが立ちはだかる。


「……でかいな」


狩人の少年が声を漏らす。

だが男は一歩も引かない。

守るべき日常が、彼の背中を押していた。

戦いは激しく、しかし計算されていた。

鍛冶屋が火で竜の鱗を炙り、薬草師が仲間を回復させる。


狩人が翼の隙間を狙って矢を射る。

男は畑で鍛えた手足の感覚で竜の攻撃をかわし、決定の一撃を探す。

やがて黒い翼が地面を掻き、煙と埃が舞う中、竜の身体に亀裂が走った。


「今だ!」


男の叫びに、仲間も全力で応える。

光の奔流と共に、エルラカルラは消え去った。

山が静まり、空は澄んだ青に戻る。

小麦畑の穂が揺れ、鶏の鳴き声が戻る。

生活を守るために戦った者たちは、深く息を吐き、互いに微笑んだ。


「……守れたな」


男は遠くを見やる。

まだ影は残るかもしれない。

だが、今日という日常は、確かに、彼らの手で守られたのだ。

読んでくれた方ありがとうございます

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