第五話 現場
※本作は一次創作です。
※AIは執筆補助として使用しています。
ツムギがZEROに預けられてから、数日が経っていた。
候補生施設とは違う空気。
静かで、張り詰めていて、無駄がない。
訓練場の床に、霊巡の残滓が薄く漂っている。
「……そこまで」
真琴の声で、動きが止まる。
ツムギは息を整えながら距離を取った。
対面にいる迅は、ほとんど呼吸を乱していない。
勝てない。
だが、崩されてもいない。
紗月が腕を組んだまま言う。
「動きはいい」
青司も壁にもたれながら続ける。
「候補生にしては、な」
迅は短く言った。
「無駄が少ない」
碧は、少しだけ微笑む。
「うん。ちゃんと見えてる」
ツムギの胸の奥が、わずかに熱くなる。
初めて。
ZEROから、評価された。
そのときだった。
真琴が言う。
「出動する」
空気が変わる。
訓練ではない。
現場。
⸻
夜。
冷たい空気。
瓦礫の散らばる空き地。
霊体は、すぐに見つかった。
人の形をしている。
だが、中身は違う。
濃い。
重い。
霊巡の密度が異常だった。
ツムギは刀を構える。
呼吸を整える。
(いける)
訓練通りに。
霊体が動く。
速い。
ツムギは反応する。
避ける。
踏み込む。
斬る。
手応えはある。
だが。
浅い。
霊体は止まらない。
圧が違う。
空気が重くなる。
霊巡の密度に、体が押される。
(まだ——)
動こうとする。
その瞬間。
霊体の腕が振り下ろされる。
反応が、
わずかに遅れる。
「下がって」
声。
目の前に、碧が立っていた。
いつの間に。
白と黒のポンチョが、静かに揺れている。
碧は刀を構える。
霊巡が、自然に集まる。
宣言はない。
技名もない。
ただ。
一歩。
踏み込む。
振り抜く。
それだけ。
霊体の動きが止まる。
次の瞬間。
崩れた。
音もなく。
抵抗もなく。
消えていく。
終わった。
あまりにも、
あっさりと。
ツムギは動けなかった。
自分が止められなかった相手が、
一瞬で終わった。
技ですらない。
ただの斬撃。
それだけで。
迅が横を通る。
何も言わない。
紗月も、青司も。
碧だけが、振り返る。
「初めてなら、普通だよ」
優しい声。
慰めではない。
本当にそう思っている声。
ツムギは理解する。
自分は、
まだ、
ここに立てていない。
⸻
帰り道。
一人。
夜風が冷たい。
手を見る。
震えてはいない。
恐怖ではない。
悔しさ。
情けなさ。
そして。
理解。
月守碧は、
届かない場所にいる。
だから。
ツムギは拳を握る。
(追いつく)
打算ではない。
利用でもない。
純粋な意志。
初めて。
本当の意味で、
ZEROの背中を見た夜だった。




