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魔王さんちの三男坊はいい加減すぎる  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』


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天下の往来




 魔人同士の戦いにおいて固有魔法は、その勝敗を大きく左右する。当然、ネタが割れている方が対処可能な分、不利となる。


 ドルグシンの固有魔法は不明だ。戦場でもそれを見たことがない。

 というか、俺とツィリルはどこにも属さねえ――属させてもらえてなかった独立遊軍扱いだから、将軍クラスがどこで何やってんのかなんて知らされもしねえ。


 だがいまの速度、通常ではあり得ない。まるで〝剣聖〟のようだった。いや、それをも凌ぐように見えた。


 不可視で異常なほどの速度。だとすれば、付与(エンチャント)系列の可能性が高そうだ。わかんねえけど決め打ちで動くしかねえのが、魔人との戦い方だ。

 そんなことを考えた瞬間、俺の背後でゴッという鈍い音が響いた。振り返ると崩れ落ちていたオフリーが尻を立てて頭から地面に突っ伏している。

 頭にでっけぇたんこぶができていた。


「殴ったの?」

「ご心配なく。手を汚したくはなかったので、ちゃんと剣の柄で殴りましたから」


 いやそんな心配はしてなぁ~い……。

 というか気絶してまでそこを責めるの、ほんとやめたげて。さすがに同情を禁じ得ない。


「あ、そっか。すみません、アンフィスバエナが汚れちゃいましたね。柄は地面の雑草でキレイに拭いておきます」


 女って残酷ゥ。

 あと、宝剣の扱いよ。仮にも魔王の私物なのに。売り飛ばせなくなったらどうしてくれるんだ。


「そういう意味じゃなくてさ。てっきり殺しちまいそうだなって思ってたから」

「だって先ほど彼らに、無様に気絶させる、と言ったのはラドでしょう。ほら、見てください。うつ伏せでお尻立てて気絶ですよ。ちゃんと無様にさせましたから」


 眠そうな顔で律儀、且つ、むごいことを言う。


「……ああ、うん……。ありがとう……。芸術的だ……」

「どういたしまして」


 確かに言った気がするけども、ものの例えってーのを知らないのかな? それとも、慰み者がよほど効いたのか。

 ま、こんな半端者の慰み者呼ばわりされたら、さすがに腹も立つってもんか。もういい年頃の乙女だもんな。


「助かるよ。ドルグシンやオフリーを殺しちまったら、ローナが困る。魔王一族に嫁いだって事実がなきゃ、ローナの母ちゃんが殺されちまうからな。俺以外のやつらのところに嫁がされたら何をされるかもわからん。オヤジや兄貴の女の趣味や扱い方なんざ知らんしな」

「嫁ぐ……」


 いかん。ものの例えのわからん女だった。


「や、違う。違うぞ。俺に幼女趣味はねえ。とりあえず預かるだけ。表現。例。比喩。ただの」

「さすがにわかってますが?」


 じゃあゲスを見るような視線をこっちに向けるなよ。すっごい不安になるだろ。

 ちなみに俺はツィリルにも手ェ出していない。


 ちょっと前までの俺はただの青臭いくそ真面目なガキで、ツィリルは憧れの綺麗なオネーサンで、到底手の届かない高嶺の花だったから。彼女が配下であることを理由に、命じて手を出すなど論外だと考えていた。

 そして今後も出すことはないだろう。

 そらあよ、人生二周目ともなりゃ精神がジジイで、ツィリルを見てもオネーサンどころか少女にしか見えなくなっちまった。ましてやローナなんて気分はもう孫世代だ。

 我ながら極端から極端に走っちまったもんだ。そのうち適齢の嫁さん捜すのも悪くねえかもな。


 そういえば当のローナは……。

 視線を回すと、彼女は逃げることも泣くことも笑うことも戦うこともせず、ただ突っ立っていた。

 草原に立って、感情のない瞳で俺たちを見ていた。いや、その視線は俺やドルグシンらを通り越し、さらに遠くを眺めるような目だ。


 瞳に映るは諦観の念か。

 それはそうだろう。どちらが勝っても、自身の運命は似たようなものだ。母は助かり、自身は奴隷となる。そう思っているのだから。何ならさっさと決めてくれってなところか。

 俺が嫁ぎ先のひとりだったと知って、さぞや絶望したろうな。


 さて、と。

 俺はドルグシンへと向き直った。


「早々に不意打ちをかましてくれた割には、行儀良く待ってもくれるじゃねえか」

「オフリー卿とは違い、王族に対する一定の忠義心は未だ持ち合わせておりますゆえ。それと、殿下とレッキアの対話は、なかなかに楽しめるものでした。……少々うらやましい」


 そらあ、あのロガビュの側近じゃ息も詰まるだろうよ。

 そこは素直に気の毒だ。


「ハッ、盗み聞きとは趣味が――」

「ご冗談を。ここは天下の往来ですぞ」

「う……」


 ごもっとも。しかし、ツィリルに対しては容赦はないが、出来損ないとはいえ王族である俺に対しては、多少の敬意を持ってくれているということらしい。

 でっけえお世話だ。やりにくくなっちまう。


「ただ、少々オイタが過ぎますな、()()()()


 ドルグシンの全身から魔力が立ち上る。目を凝らせば、やつの両足に魔力が流れ込んでいくのが見える。魔力の可視化は魔人ではなく人間側の特性だが、こういうときには半身が役立つ。


 こりゃ間違いねえな、付与だ。厄介だぞ。

 そう確信を得た直後にはもう、やつの巨体は陽炎のように消失していた。


楽しんでいただけましたなら、ブクマや評価、ご意見、ご感想などをいただけると幸いです。

今後、作品を作っていく上での糧や参考にしたいと思っております。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

明日で完結予定です。

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