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魔王さんちの三男坊はいい加減すぎる  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』


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信頼重すぎぃ~!




 その段にいたり気づく。

 膂力はオフリーが上だ。オフリーは己の剣を片手で持っている。対するツィリルは両手だ。その状態で拮抗。

 オフリーが自由な方の左手をツィリルの腹へと伸ばす。掌近くに橙色の丸い光を溜めて。勝ち誇った卑しい笑みで。

 ツィリルの眠そうな視線がようやくそこに落とされた。


「――っ」

「くははっ! 爆ぜろッ、第三王子の売女(出来損ないの慰み者)がッ!!」


 あ~あ、バカが。

 光が膨張して炎へと変化する。そうして間断なく爆音とともに爆ぜた。

 ツィリルの腹が――ではなく、術者であるはずのオフリーの左腕がだ。焼け焦げた血と肉片と骨になって四方八方へと飛び散り、不自然に空中に浮かぶ。


「あ……?」

「あら、ご自身でご自身を消毒とは、よい心がけですね」


 ツィリルが微笑んだ次の瞬間、空中に浮いていた肉片が落下を開始する。びちゃびちゃと、大地を汚して。


「ンだそりゃ……?」


 オフリーは愕然とした顔で失った腕を眺めていた。肉が爛れて破れ、骨が突き出し、焼け焦げた傷口から血が勢いよく噴出している。

 眺めて、しばらく。

 青ざめた顔色で剣を取り落としたオフリーは、失った腕――肩口の傷を掌で押さえて悲鳴を上げた。


「あ、ああああああッ!? 何っっっで!? お、お、お、俺の腕ェェェェーーーーっ!?」


 跪き、半眼で微笑むツィリルを見上げる。


「な、にを……した……?」

「ふふ、何でしょうね? まだやりますか、三百年も生きたのにその程度のおじさま?」


 そら気づかんだろうよ。

 ツィリルの魔法は俺が教えた。彼女の希望と覚悟に応えて俺が彫った。

 舌に結界の魔方陣を。

 爵位持ちなどの強い魔人には生来、固有魔法というものが備わる。オフリーで言えば爆破魔法だ。ツィリルは生まれつき、魔力こそ王族に匹敵するほどに大量に備わっていたが、固有魔法だけは持たなかった。


 それは魔人という種族にとって、致命的なことだった。

 魔人族の肉体は膨大な魔力を貯めておける器ではあるが、限界を超えた力はいずれ暴走する。魔力を暴走させた魔人の果ては、前世の知識で語れば極めて威力の大きな爆弾に近い。その場を焦土と化し、他種族も同族もなく巻き込み自滅する。

 魔力の大暴走だ。その仕組みはローナの魔術陣に近しい。


 ゆえに、魔族の王――いや、魔人の王が自ら戦いを辞めることなどあり得ないのだ。魔人は上級であればあるほど、魔力を発散させねばならない。常在戦場こそが上級魔人の安らぎだ。

 つまり有力な魔人にとっての戦争とは、三大欲にも匹敵するほどの生存手段でもある。戦って領地を奪うのではなく、常に戦いそのものを求めていると言っても過言ではない。


 出会った頃のツィリルは、はち切れそうなほど限界に達していた。

 魔力暴走で己の制御を失い、カイブツと化し、血涙を流しながら強大な魔物を素手で引き裂いていた。自らの筋繊維は切れ、血管は膨張して破裂し、それでもなお破壊衝動を止められない。

 魔力全てを消費し尽くすまで、カイブツは動き続ける。消費に失敗すれば、その場で魔力を暴走させて焦土を作成し、自らの生と引き換えに死を振りまく。


 とにかく王族並の魔力を持つ魔人は、一般的な攻撃魔法や生活魔法をいくら小出しにしようとも、いずれは破裂する運命だ。ゆえに膨大な魔力消費を生む固有魔法の有無は、彼らの生死に直結する。

 ツィリルもそうだった。だから俺は彼女の持つ膨大な魔力の出口として、失われた古代の魔法で攻撃魔法ではない結界魔法の魔方陣を与えたんだ。存在しなかった固有魔法の代わりにな。


 結界は現出させ自在にそれを維持する必要がある以上、他の攻撃魔法に比して膨大な魔力を消費する。さらにそれ単体で誰かを傷つける心配もない。

 あ~、これは使い方次第ではあるけれど。

 要するに、ツィリルは疑似固有魔法である結界魔法を使って、オフリーの左腕を覆ったのさ。その中でオフリーは膨大な魔力を有する爆破の固有魔法を使ったせいで、自滅しちまったってことだ。


 ツィリルがアンフィスバエナの刃をオフリーの頸部にあてがった。

 そうしてまるで独り言のようにつぶやく。口角をほんの少し引き上げながらだ。


「……どうしよう、殺すなとラドルファス殿下に命じられたのに、興奮していまにも勢い余ってしまいそう……」

「よ、よせ!」


 ツィリルが魔剣を掲げる。

 オフリーから顔色が失われた――その瞬間、ツィリルの頸部へと銀閃が走った。オフリーよりもなお速く、目で追うことさえ困難なほどの速度と正確さで。


「――ッ」


 ドルグシンだ。

 俺のアンフィスバエナがその刀身をねじ込んでいなければ、ツィリルの首は胴体とおさらばしていただろう。

 ギィと刃が擦れ、次の瞬間にはドルグシンはもう距離を取っていた。


「ふぅぅ……」


 き、肝が冷えた……。巨体なのに音すら立てねえんだもんよ……。

 にもかかわらず、ツィリルは焦った表情ひとつしなかった。たったいま、自分が殺されかけたのにだ。

 いつもの眠そうな半眼で、俺を見ているだけだ。

 だから俺は彼女が口を開く前に抗議するんだ。


「ちゃんと避けてよ、ツィリルちゃぁ~ん。結界の発動なら間に合ったでしょ」

「ラドが守ってくれると信じていますから、必要ないかと思いまして」


 信頼重すぎぃ~!

 全体重をかけて寄っかかってくるその重量には、俺の精神が保たん。


「あと、ちゃん付けはやめてください。わたしの方が年上です」


 転生重ねた俺からしたら、少女にしか見えんて。

 面倒だしそんな場合でもないから口には出さないが。


楽しんでいただけましたなら、ブクマや評価、ご意見、ご感想などをいただけると幸いです。

今後、作品を作っていく上での糧や参考にしたいと思っております。

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― 新着の感想 ―
連続更新ありがとうございます&お疲れ様ですヽ(´▽`)/ ツィリルのラドに対する信頼が重いなぁ。 いや、二人の出会いと言うか馴れ初めを知れば納得なのですが、其れにしても重い。 多分一生着いてきてくれる…
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