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魔王さんちの三男坊はいい加減すぎる  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』


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俺が娶るわ




 魔人ドルグシンはローナの前で片膝をつき、恭しく頭を垂れながらも浪々と言い放つ。


「お迎えにあがりました。アスモラヴァ帝がご息女ローナ・アスモラヴァ様」


 まるで威圧をするかのように巨体で見下ろし、有無を言わせぬ口調で、慇懃無礼にだ。

 同じくオフリーも、ニヤけた顔で。


「魔王オルロンド様とそのご子息ロガビュ殿下が、ブライローズにてお待ちです」


 それだけを告げると、やつらはそうそうに立ち上がり、巨大な掌でローナの細い腕をつかんだ。逃がすまいと。

 痛みでローナが顔をしかめた。だが言葉はない。最初から従うつもりだからだ。


「さあ、こちらへ」


 どうやら俺やツィリルの監視ではなかったようだ。あるいは兼任していたか。

 何にせよドルグシンとオフリーの主目的は、和平の使者となるローナの出迎えだったらしい。ならば森林村や獣王都へと続く道を辿らずに、俺たちと同じルートを進んできたことにも合点がいく。

 含み笑いをして、下卑た表情でオフリーがつぶやいた。


「くくく、まだガキなのに気の毒にな。あなた様はこれよりオルロンド家に嫁ぎ、死よりもなおつらい目に遭うでしょうな……ってか。くくく」

「恨むなら愚かな父親アスモラヴァ帝を恨むがいい。これまでの業を水に流し両種族の和平だなどと、片腹痛い。嫁ぐと言っても、貴様は体の良い人質に過ぎん。勘違いした希望など持たん方がいい」


 二体の魔人が嘲りながら、ローナに顔を近づける。意味がわかっていないのか、ローナはきょとんとした表情だが。

 しかし――。


 ……陰謀合戦はどうやら人間族の方に一日の長があるようだ。


 その娘が魔王城に足を踏み入れた瞬間には、魔都ブライローズは炎に包まれるというのに。そうなりゃ未曾有の大惨事だ。当然、この二体の魔人も助からない。

 腕を引かれたローナが、俺とツィリルを振り返ってもう片方の手を振った。無表情で、静かにつぶやいて。


「たすけてくれて、ありがとなー。おぢ。ばいばーい」


 そうして二体の魔人とともに歩き出す。連れ去られていく。

 このまま行かせりゃ、俺たちの追っ手は十中八九、ローナの命やブライローズとともに消滅する。この先、俺とツィリルが生きてくなら、これほど都合のいい展開はねえ。


 仮にオヤジとロガビュが生き延びられたとしても、俺やツィリルの捜索に割く力は確実に削がれるだろう。最高だ。辺境での平和な暮らしが待っている。

 理想の人生じゃねえか。なのによ。

 俺はガシガシと頭を掻いた。


「ツィリル」

「はい」


 なのに……。だめなんだよなあ、こういうの……。

 わかってんだよ、賢い生き方じゃねえってことくれえは……。


「本当にいいんだな?」

「慣れてます。そういうところだけ以前の殿下と変わらなくて、むしろ安心しました。というより、行動するならお早く」

「くかかっ、根っこは同じだ。成長後だと思ってくれや」

「それは無理です。殿下はもっと可愛かったので」


 きっぱり言うな。


「おまえの方がかわいいよぉ」

「……わたしを口説く必要はないのでは?」


 面食らった。そりゃ一体どういう意味だ。

 ツィリルが微笑む。


「どうぞ、お命じください。それとも、わたしが彼らより劣るとでもお考えですか?」

「まさか。おまえは俺が育てた最強の魔法使いだ」

「イエス・マイロード」


 ドルグシンとオフリー、そしてローナの小さな背中へと向けて――。


「待てよ」


 平和にゃ生きられねえなあ。ただ故郷を出るだけでいくつ罪重ねんだよって。くく。

 んでも、ローナの命は言うまでもねえ。魔都で暮らす大半の魔族は、魔人であっても戦う術を持たねえ庶民だ。力も魔力もほとんどなく、人間族と大して変わらねえ生き方をしてるやつらも少なくねえ。


 そういうやつらをまとめて消し飛ばして、俺はこの先のんきに生きていけるのかっつー話よ。気分悪ィだろ。

 誰も本当は腹の底から戦いなんざ望んでねえのよ。魔王(オルロンド)人王(アスモラヴァ)以外は。

 だから。もう一度呼ぶ。


「命令だ! 待て、ドルグシン、オフリー!」


 クソでかいため息をついて、やつらは立ち止まった。そうして隠そうともせず、あからさまに面倒くさそうな表情で振り返る。

 俺はブライローズの第三王子だが、半分は人間だ。この国じゃ誰にも愛された記憶なんざねえ。煙たがられてんのさ。家族からも、軍からも、政治屋どもからもだ。

 ただひとり、そんな俺に忠誠を誓った変わり者、このツィリル・レッキアを除いてな。

 いまさらだ。だからこの二体の魔人の態度や言動だってもう慣れてる。


「そのガキはオルロンド家に嫁ぐんだよなあ?」


 ドルグシンが応えた。


「それが何か?」

「だったら、俺にもそいつを自由にする権利ってのがあるんじゃねえの? なんせ俺、第三王子だからな」


 今度はドルグシンだけではなく、オフリーまでもが眉をひそめる。

 オフリーが顔を半笑いで歪めて吐き捨てた。


「何が言いたいんです、()ちゃ()()?」


 それは粘つくほどに、舐めた言い方だった。

 殿下とすら呼ばれず、坊ちゃん。くく、んなつまんねえ挑発に乗るほど、こちとら若かねえんだよ。

 だから俺は顔面に血管を浮かべながら、珍妙に顔を歪めてオフリーを指さす。


「おめえ耳が悪いのか? いや、違うなあ、頭が悪くて言葉が理解できなかったか、オフリー。――命令だ。そのガキ置いてけ。オルロンド家の一員である俺が娶る。何も問題はねえはずだぜ」


楽しんでいただけましたなら、ブクマや評価、ご意見、ご感想などをいただけると幸いです。

今後、作品を作っていく上での糧や参考にしたいと思っております。

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― 新着の感想 ―
連続更新ありがとうございます&お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 胸糞展開をぶち壊してくれるおぢサイコー! ……いや、ホントにε-(´∀`; )
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