秘密
オレには、幼馴染がいる。
その幼馴染、梨花にどうやら彼氏ができたらしい。
そもそも幼馴染とはいえ、最近じゃあまり接点もなく、ろくに話すらしていない。
中学二年くらいから、オレたちは塾や部活に忙しく、その頃から徐々に疎遠になっていった。
それまでは、よく梨花がオレの部屋でマンガをよんだり、くだらない話をしながら遊んでいたっけな。
そんな梨花に彼氏か…
そりゃ、高校生にもなれば恋人くらいできるだろうよ…。
オレたち高校二年生だもんな…
そりゃね…
旅立つ娘よ、幸せにな。
…ってさ、オレは梨花のおとうさんじゃなかったぜ。
でも、梨花が彼氏と並んで一緒に歩いてるってのをみると…
なんか、少し胸が締め付けられる感がするのは、なぜだろう?
オレって、梨花のこと好き…なわけないよなぁ。
だって、オレは今まで本気で好きな人なんてできたことないし。
なんかモヤモヤぁーってするんだよなぁ…
なんだろ?
心の中でだれか、わたあめでも作ってんじゃね⁉︎
そんなわけないか…
…
複雑なおもいで、梨花と彼氏の背中を見送った。
同じ高校に進学するも、オレたちは特に会話していない。
でも、です…
ハグは、しているんです。
半年に二回程度。
誰にも言えない秘密…
…
そんなある日、学校で全校集会のときに…なんか感じる…視線
…
パッと視線の方に目を向けると、知らない男子がこちらをみていた。
…だれやねん
てか、めっちゃこっちをガン見してる…
どっかで…みたようなみないような…
…
ま、どうでもいい。
フィッと視線をオレの方から先に外した。
すると、さっきの男子がいきなりオレの目の前に現れて
「なぁ、あんた梨花の幼馴染なんでしょ?」
と、オレの全身をじろじろ舐めまわすようにみてきた。
…
あ、梨花の彼氏か。
「あー、そうだけどそれが何?」
「いや、べっつにー」
少し不機嫌そうに彼氏とやらは、去っていった。
感じ悪っ!
梨花は、あの彼氏のどこがいいのだろうか?
ま、好きっていうならそれはそれでいいか。
てか…オレたちの秘密がバレた⁉︎
んなわけ…
それから数日後、すっかり梨花と彼氏のことなんて忘れて、のんびり下校していた。
パタパタパタパタ
後ろからだれかが走ってくる音がした。
子どもかな?
門限すぎちゃうって、焦って走っているのかなと、振り向きもせず足音に耳を澄ました。
そしたら、オレの前にいきなり梨花が現れた。
「おっす〜、ひさ」
オレの目の前で、昔と変わらずの笑顔で笑いかけてきた梨花。
「梨花かよ…」
「ムゥ〜つ、梨花だよ。ごめんなさいね、梨花でさ」
と、少しむくれていた。
「むくれんなって。相変わらずだな…てか、今日は彼氏一緒じゃないんだ?」
「あー、うん。てか、蓮くん蒼になんか話しかけたんでしょ?なに話したの?」
…
話したっていうのか?
あれは…会話だったのだろうか…?
「まぁ、たいしたこと話してないよ」
「そうなの?ふーん」
少しつまらなそうに空を見上げる梨花。
「あのさ、彼氏…のどこに惚れたの?」
「えっ?聞いちゃう?いいよいいよ♡久しぶりに話すけど、いきなり梨花ちゃんの恋バナ始まりますっ‼︎やっぱり優しいところかな♡」
って、いきなり惚気だす梨花。
…
優しい…の?
ま、オレの知らない部分がたくさんあるんだろう。
久しぶりの梨花は、昔と変わらずだった。
「そっか、よかったな」
「うん♡ごめんね、わたしばっかり幸せで。少しばかりお裾分けするね♡」
そう言って、いきなりラブラブ写真を見せつけてくる梨花。
…
クソつまらん。
てか…一瞬なんだかイラッとしたのは、オレに彼女がいないから?
それとも…ヤキモチ?
昼間の、あの彼氏の感じ悪さが思い出されたから?
…
?
好きでもないのに、ヤキモチなんてやかないよね。
そもそもオレは、梨花を一度も好きになってないし、なんならオレもこの前まで彼女いたし…。
その彼女は…勝手に告白してきて、つまんないってすぐオレをふってきたけどさ…
じゃあ、この感情って…なに?
…
オレは…やっぱりまた、彼女が欲しいのかな?
…
今は、いらないんだよなぁ。
彼女できると、疲れるだけだし。
梨花のラブラブな写真をみて、
「幸せそうでなによりですね。じゃあな」
と、手を振った。
梨花と話していたら、いつのまにか家に着いていたのだ。
「じゃあねん」
るんるんで玄関に入っていく梨花。
楽しそうやんけ。
オレは、そんな梨花をみて気だるそうに玄関をあけた。
オレもるんるんで玄関あけるほど、楽しい恋したいな…。
そんな恋、あんのかな?
…
あっという間に次の日は、やってくる。
サンタと夏休みは、あっという間にやってこないのに。
イヤな曜日だけ、早送り人生ってボタンないんかな?
週一で、どこかすきな曜日早送りってさ…
間違えて、土日スキップしたら萎えるな…
ハハ…くだらねーぜ
気だるそうなオレは、今朝も現在進行形でやっぱり気だるい。
そんなダルダルなオレは、学校の門をダルそうに通り抜けた。
「おっすー、くろー」
?
「は?」
後ろから肩にもたれかかりながら、梨花の彼氏がなついてきた。
「だれだよ?人違いだろ」
「あ、ごめーん。くろじゃなくてあおん」
…
うぜー
朝からこのテンションうぜー…
「なぁなぁ、無視すんなって。オレが梨花と付き合ってるからって、ヤキモチやいてんだろ?梨花かわいいもんなぁ。ごめんなぁ」
…
マジうぜぇ
「あの、悪いけど遅刻するから先行くわ」
「え、まだ時間あるじゃん。どんだけ足みじけーのよ?ギャハハ」
…
あー、ウザすぎにもほどがあるよねー。
ほんと梨花が、なぜこの男を選んだのか謎。
てか、なんでこの人オレにこんなに絡んでくるんだろ?
秘密知ってるなら直接言ってきてもいいもんだよね?
でもきっと、知らないはず。
ただオレは絡まれ損な気がする。
…
続く。