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第8話 風呂いやいや神狼
「ルーファス、入るよ」
「……やだ」
ずしん、と大地が揺れるほどの体重で踏ん張る神狼。
「前足、つっぱらないの。ほら、泥だらけ」
「……ぜったい入らない。泡だらけになる」
湯気の向こうで狼の耳がしゅんと伏せられている。
ちーちゃんが腰に手を当ててにらむと、金の瞳が困ったように泳いだ。
「ルーファス、いい子で洗ったら……ピザにハムをのせてあげる」
「………………」
少し間を置いてから、渋々前足を動かす。
どっぷんと湯船に落ちた瞬間――「わん!」と抗議の声が響いた。