8回目 バンパイアの苦悩
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
女子高生のレイリちゃん、実はバンパイアです。
バンパイアの性質のひとつとして"鏡に映らない"というのがあるのですが、実はその性質のせいでレイリちゃんは服装や髪型、体形には長らく無頓着だったのでした。
ところが、デジタルカメラになら写るのというのがわかると、意識も大きく変わります。それによって自分を客観的に捉えることができるようになるのですから、おしゃれにも俄然興味が湧いてくるというものです。
「あら?今日は何だかスカートがキツイわね」
ふと気になり、ひと月前に取ったセルフポートレートと比較してみると……。
「太ってる……。明らかに太ってる。これ、マジにヤバい」
その理由、彼女には心当たりがありました。
ここのところ毎日、深夜にながら勉強をしていると、大好きな彼が心の中に直接語り掛けてくる(気がする)のです。
『勉強のしすぎで、脳がエネルギーを欲しているみたいだよ』
その声は彼女が愛する、アイドルグループ SMOW MANの彼でした。
『今夜も"カリウムとナトリウムの無限ループ・スナック"はいかがかな? 美味しいよ』
スナック菓子の袋には、彼の写真が印刷されています。
『君に会いたい。会えるといいな。そのためには、早くこの袋を開けて』
そして袋の内側には、SMOW MANのライブチケットが抽選で当たるQRコードが印刷されているのですが、そのQRコードは、中身を全部出してからでないと見られません。
そしてスナック菓子は、一度開けたら早く食べてしまわないと湿気ってしまいます。
「うー、ライブ行きたい。彼に会いたい。でもこの体形で彼に会うことなんてできなーい!」
最近は背中の羽で飛ぶのも、何となくしんどくなってきたように感じていたレイリちゃんでした。
おわり
※歩くのと羽で飛ぶのと、皆さんはどちらの方が楽だと思いますか?
私はもちろん羽なんてありませんから、「逆にあなたは?」とたずねられてもわかりかねるのですが。