78回目 幽霊の檻
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
とある場所のとある発明家が、幽霊を閉じ込める檻というのを製作しました。
特定の周波数を用いた電磁波発生器を定間隔に配置して、そこからビーム状に発生させた電磁波によって、目には見えない柵を作るという仕組みです。
その柵を前後左右上下の六面に設置することで、檻を完成させたのでした。
理論上、電気が途絶えない限り、幽霊はその中から逃げられなくなるはずです。
人間は入らないで下さい。
檻なんて見えないからと言って外に出ようとしたら、肉体は檻を抜けられますが、魂は檻の中に取り残されてしまいますから即死となります。
出入りさえしなければ、問題はないのですが。
発明家はテストのため、さっそく深夜になると必ず"出る"という噂がある場所へ向かいました。
幽霊をおびき寄せるエサが何かなんて知りませんから、とりあえず通り道と思しき所へ置いておいて、待ち伏せするという気の長い作戦です。
噂はあくまでも噂。本当に出るとも限りませんし、いつ出るともわかりません。
後は忍耐と覚悟を決めたその時です。幸運にも幽霊が現れたのでした。
檻の上を通過した瞬間を狙ってスイッチオン!
拍子抜けするほどあっさりと幽霊を捕獲する事ができたのでした。
一方掴まった幽霊はというと、予想だにしなかった状況に、檻の中で我を忘れて大暴れしています。
こうなると発明家の方も、怖くて檻を解除することはできません。
檻から解き放たれた瞬間に取り憑かれでもしたら、それはもうたまりませんから。
やはり霊能者に同行してもらうべきだったでしょうか。
いつまでこうしていなければならないんだろうと思いながら、五分が過ぎた頃でした。
どうやら幽霊の動きが衰え始めたように見受けられます。
十分経った頃には完全に動きを止め、檻の中央でうずくまってしまいました。
そしてその場に横たわると、ついにはその姿が消えてしまったのでした。
どういうことでしょう?
ひょっとして、幽霊は死んでしまったのでしょうか?
最終的に、檻の電源を落として中を確認しても、そこには何も残ってはいなかったのでした。
何だか幽霊に対して悪いことをしてしまったような気がしないでもないのですが、成仏したと考えればあながち悪いとも限らないのではと思うことにしてみたのでした。
その後の研究で、幽霊の連続活動限界は十五分、それを越えて姿を現し続けることはできないということがわかりました。
時々、動けなくなり消えたフリをして、檻の電源を落とすや襲ってくる賢いヤツもいるようです。
この檻が何の役に立つのか、まだハッキリとは定まっていないのですが、もし正式に商品化された場合には、取り扱いにはくれぐれもご注意下さい。
おわり
※『肉体は檻を抜けられますが、魂は檻の中に取り残されてしまいますから即死となります』って、人で試したんでしょうか?




