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77回目 星たちの輝き

ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。  パカッ。

 閉店間際の書店内は、人こそ少ないものの、終業に向けての慌ただしさが感じられました。レジには短い列もできています。


 今夜の寝酒のアテは見つけられたのでしょうか。あるいは学習のためのお伴か、仕事に必要な資料など。



 子供の頃、星を見るのが好きだった私は、書店に入るや天文学のコーナーに、まっしぐらに向かっていました。


 最新型の望遠鏡の技術や、それによって見つかった新発見。まもなく起こるであろう天文現象や最先端の学説などが、わかりやすく解説された本を、値段を見比べながら選んだものです。


 ふとそんなことを思い出していると、実はここに並べられている本は、どれもが輝く星のように見えてきたりしたのでした。


 それらは、夢が努力という強い圧力を受けて結晶化し輝き始めたもの。


 世にはこれほどまでにたくさんの創作物が出回っていることに、改めて気が付くでしょう。デジタル書籍を含めると、その数は夜空の星に匹敵するかもしれません。



 帯付きのベストセラーは、例えるならマイナス一等星。


 突如現れて極大の明かりを放つ新刊は彗星のよう。


 続きものは星座となって読者の心を惹き付け、それぞれが独自の神話を語っているのでした。


 ただ、書店において最も多くを占めるのは、棚に納められた文庫や新書ではないでしょうか。星と同じで、多すぎるがゆえに、誰かの目が止まってくれるまではには至らないのかもしれません。


 最近では人工衛星が多くなりすぎて、星を観測する人にとっては邪魔にしかならないのだとか。あまりにも強すぎる人工の光は、例えるならスマホやゲームでしょうか。魅力的すぎて、本という微かな光はかき消されてしまいそうです。



 言うまでもないことですが、私が書く文章などは、書店という小宇宙に並ぶことすらないでしょう。


 一等星のように輝く必要はありません。ただ、誰か一人の心に、一時だけでも特別に輝く星になれたなら、それだけで幸せなことではないだろうかと考えたりするのでした。



 ひとまず私は目的の雑誌を購入し、蛍の光が流れ始めた書店を後にしました。


 まだ心にうずき続ける郷愁(ノスタルジー)に促されて、アーケードの隙間から上空を見上げてはみたのですが、街灯と窓からの明かりにかき消され、やはりここからでは星明りのひとつも見つけることはできなかったのでした



おわり

※消えていった星っていうのもあるんですよね。

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