71回目 夢をあきらめない
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
ごきげんよう。
私は、将来あなたの好敵手となるであろう方の依頼を受けてやって参りました。
依頼というのは、他でもありません。あなたに、今抱いている夢をあきらめてもらいたいのです。
依頼主様から見れば、あなたが将来の好敵手。
あなたが夢をあきらめさえして下されば、依頼主様がその夢に一歩近づけるというのは言うまでもないでしょう。
どうか、私の願いをお聞き届け下さい。
もちろんタダとは言いません。
その代償として、私はあなたに、誰もがうらやむような幸福が手に入れられることをお約束致します。
具体的なことは言いません。あなたに幸福だと感じて頂くことが大事なのですから。
いかがです?
夢をあきらめなかったとしても、その夢はきっと叶わないでしょう。
私がいるのですから。
あなたの願う結果は得られない可能性の方が高いとは思いませんか?
さぁ、どうか夢をあきらめて下さいませ。
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そんな夢を見ていたようです。
あきらめなければ私の夢は叶ってしまうと、彼の言葉からは読み取れなくもなかったのですが。
夢が叶った場合の幸せに比肩する幸せについて、どれくらいのものであれば私は満足するのだろうと改めて考えたのでした。
もしこの夢が本当なら、夢をあきらめてもいいんじゃないかと考える自分もいます。
思えば、自分は案外欲深いのかもしれません。
将来、私の好敵手となる相手とは、一体どのような人物だったのでしょうか。
おわり
※お稲荷さんが願いを叶えてくれる場合、それは等価交換なのだそうですね。すなわち、自身の知らない間に、どこかで何かを失っているということらしいですが、心当たりのある方はいらっしゃいますでしょうか?




