64回目 男のロマン
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
「こちらブートス・ユキセ号、敵と遭遇。直ちに攻撃態勢に入る」
『司令部、了解した。こちらから長距離砲で援護する。そちらの現在位置を知らせよ』
「座標をコードC03の形式で転送した」
『受け取った。援軍がそちらに着くまでなんとか耐えてくれ』
「うわぁ!」
『大丈夫かっ!?』
「たった今、左舷レーザーに被弾した。残りはミサイルだけだが先の戦闘のせいで数が少ない。できるだけ急いでくれ!」
石油ストーブの段ボールの内側に計器類を描き、メインディスプレイの代わりに星空の写真を貼りました。
そして目覚まし時計、キッチンタイマー、温度計、電卓、方位磁石。目盛りのあるモノをその中に並べます。
操縦桿はモデルガンに決定。冒険の妨げとなる相手には、引き金を絞ればいいのです。
画用紙に描かれているのは目的地までの航路。宇宙船発進の準備はすでに整っていました。
後は宇宙船に搭乗し、メインハッチを閉めれば冒険が始まります。
体は背もたれにしっかり預けておくこと。発進と共に強烈なGが襲ってくるでしょう。
宇宙への憧れは、やがて夢となり、目標となり、そしていつか必ず僕の任務となる日がやってくるはずなのです。
一時間後、険しい航海を経て、我々は敵と交戦状態に入りました。
「右翼がやられた!機体のコントロールの八十パーセントが失われたようだ」
『可能なら付近の惑星に不時着を勧める。急ぎ現地の救助隊を向かわせよう』
「了解。何とかやってみる」
その後ブートス・ユキセ号は未知の惑星に不時着。砂漠のど真ん中で動かなくなってしまったのでした。
メインハッチを開いて外に出ると、なんと!
そこに母にそっくりな巨大生物が現れたではありませんか。
「こらっ、石油ストーブしまえなくなったじゃないの!」
果たしてこの原住生物に、男のロマンを伝えることができるでしょうか。
おわり
※ロマンで飯は食べられないと一蹴されましたが、ロマンはおかずではないと思います。




