58回目 精神支配
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
ガチャン!
友達にもらったばかりのガラス細工を、彼は床に叩きつけるようにして壊しました。
「ひどい」
彼は私を試すように、じっとこちらを見つめています。その目はまるで、私がどんな反応をするかを予測し、次の行動を計算しているかのように感じられなくもありません。
彼は自分の意が通らないと、すぐその感情を態度に表す傾向がありました。そんな性格を知っていながら、この場所に置いてしまった不注意を、私は自ら責めるしかなかったのです。
「あなたは悪くないわ。悪いのは……私だもの」
目の前で大切な物を失った悲しみよりも、残念という他人事のような気持ちの方が上回っています。
このような光景に慣れすぎてしまったというのは、以前からは感じていました。
詰まる所、彼に精神を支配されていることを自覚していて、なおそれに依存してしまっているということなのかもしれません。
憎みたいけれど憎めない。憎むなど、自分の心が許さない。
私は、それほどまでに彼のことを好きになっていたのです。
「にゃーん」
(訳:そんなことはいいからエサをよこせ)
おわり
※にゃーん




