表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/100

49回目 傘の下で

ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。  パカッ。

 美術館の外に、見知らぬ同士の三人が傘を差して佇んでいました。


「世知辛い世の中になりましたね」


 三人で灰皿を取り囲み、互いに顔を見合わせて笑みを浮かべながら。


 傘を持つ反対の手には煙草。両手がふさがっているため携帯を出せず、自然と会話が始まったのです。


 そのうちの一人が、咥えたタバコに火を点けようとしましたが、使い捨てライターの具合が悪く、なかなか火を点けられずにいました。


 見かねた別の一人がジッポーライターを取り出すと、点火してタバコの先に差し出します。


 ティンッ、ジッ。


「ありがとう」


 スチャッ。


「懐かしい音ですね」


 それを見ていたもう一人が話すと、火をもらった本人も大きく頷いて同意します。


「そういえばそうですね。以前は至る所で聞いていたのに」


「使い捨てやプラスチックを良しとしない時代ですから、こういうライターの方がかえって推奨されるんじゃないでしょうか」


「なるほど。私も検討してみよう」


「私も」


「それにしても、本物の絵は迫力が違いましたね」


「えぇ。図鑑で見るのとはまったく」



 雨によってもたらされた、わずか五分間のコミュニケーション。



おわり

※世知辛い世の中になりましたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ