48回目 死神
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
折り重なる屍の上を、みすぼらしい恰好をした何者かが、網を振りながら歩いていました。
集めていたのは魂。
辺りをさまよっているだけの小さな光の玉を網ですくい、目の粗い虫かごのようなものに詰めているようです。
「恐れ入りますが、それをひとつ分けてはもらえないでしょうか」
「嫌だね」
「私にはそれが必要なのです」
「俺にとっても必要なものだ。欲しいなら自分で集めればいい」
「私はそんな網も籠も持っていないのです」
「じゃあ、あきらめな」
「あなたはそれを集めてどうなさるのですか」
「褒美をもらうんだよ」
「褒美?‥‥‥誰から?」
「さあね。それより、あんたはどうしたいんだ?」
「救った魂で助けたい人がいるのです」
「なるほど。でも、この魂を持って帰ってどうにかしようってつもりなら、それは無理だ。どうにもならない」
「なぜです」
「壊れた容器に、液体は注げないだろう。壊れた身体に魂はもう入れられないんだ」
「そんな……」
「誰に言われたか知らんが、からかわれたんだよ。気の毒とは思うが」
「なんてことだ」
「で、お前さんはどうやって帰るつもりなのかね」
「わかりません。もう、どうでもいいです」
「じゃあ、俺の代わりにこれをやってみるかい?」
「それが何になるのです」
「褒美がもらえるよ」
「どんな?」
「その大切な人を助けられるかも知れないよ」
「えっ!?」
「今更だが、俺が必要な分はすでに集まっていたようだ。俺は今からこれを持って行ってくる。褒美をもらって元いた所へ帰るよ」
「あなたは褒美に何をもらうのですか?」
「私の大切な人を助けてもらうんだよ」
「やります。私もやります!」
「じゃあ、この網を渡すよ。籠はあそこにある。いっぱいになったら上に報告に行くがいい」
「わかりました」
「幸いと言っていいのか、ここにはたくさん魂があるみたいだ。見つからない時はなかなか苦労するんだぜ。それこそ力尽くで奪ったりしなきゃならないこともあったりしてな」
「頑張ります。なんとしても」
「あぁ。それじゃあな」
おわり
※褒美っていう響きが怪しくていいですね。報酬や商取引なんかと違って。




