4回目 未来記
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
「これを見てみろ」
机に置かれたのは、半紙の束の右側を麻紐でつづられた見るからに古い冊子でした。
「これは?」
「我が家系に代々伝わる門外不出の怪文書だ。題くらいは読めるだろう?」
変色や紙の傷み具合から、相当前につづられたものだとはわかりますが、文字はいたって読みやすく、題も作者も書かれた年月日もよくわかります。
「O島家 未来記」
「そう我が家系の未来がつづられている。そもそも俺はこれを調べたくて学者になったんだからな」
「え、叔父さんが?」
「あぁ、そうだ。それくらいすごい文書なんだ」
「これを書いたのは、この名前の人?」
「お前の曾々おじいさんだ」
「ヒイヒイおじいさん?」
「カタカナで言うな。高祖父をわかりやすく言っただけだ」
「書かれたのは明治十二年となっているみたいだけど」
「何度か追加された形跡はあるが、おそらく最終が明治十二年だったんだろう。未来記というだけあって、明治十二年以前から見た未来の事が書かれてるんだ。しかも我が家系に限っての事がほとんどだ」
「中を見てもいい?」
「もちろん。たとえばこの辺り。何年何月何日、何時ごろに誰がどこで生まれて、名前は何で、性別はどちらでと、すべてつづられている」
「ホントだ。でもこれってマジで当たってたの?」
「あぁ。だから門外不出なんだ。O島家のことはもちろんだが、O島家に関する大事であれば書かれている。例えば日清や日露戦争の始まる日、終わった日。家族の誰が出征し、いつ戻ってきたか。それらも全部当たっているんだ」
「マジで!?」
「ほら、ここを見ろ。太平洋戦争が終わった日だ。そしてこれが昭和から平成に改元された日、元号も当たっている」
「元号まで」
「そしてココだ。ココを見ろ」
「俺が生まれた日だ。俺の名前、生まれた町、生まれた日時。男って書いてある。あっ、こっちはおじいちゃんが死んだ日だ。死因や無くなった場所までちゃんと当たってる。これホントに明治に書かれた未来記っていうか、予言書なの?」
「あぁ。間違いない。この文書の凄さがわかったか?」
「スゲェ、スゲェよ」
「本来なら身内にも隠しておかねばならないほど大切な文書だ。悪用されたらどうなるか、おまえにも想像がつくだろう?」
「うん」
「だが、これをどうしてもお前に見せなければならなかったんだ」
「何で?」
「ココを見ろ」
「俺が……死んでる」
「そう、八日も前の事だ」
「そういえば、あの時……」
「頼む。成仏してくれ」
おわり
※成仏しないと、どうなるのでしょうか?したくないというのなら、無理にさせなくても?(笑)