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21回目 口止め

ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。  パカッ。

「この度の戦い、お前の力なくしての勝利はあり得なかった。私の隣に来い。そして私と一緒に勝ちどきを上げるのだ!」


「ははっ」


 私は壇上に立つと、王と同じ目線で、ともに戦った者たちと勝利を分かち合いました。


 世界の果てにまで届きそうな歓声が響き渡ります。


 それがようやく収まると、王は新しい国づくりについての展望を熱く語り始めたのでした。


 その間私は王の斜め後ろに控えていたのですが、大きな動作で演説をする王の首にあり得ないものを見つけてしまったのです。


 驚いた私は、同列隣にいた王の従事長に目で合図を送りましたが、従事長は「後で」とだけ耳打ちをして前を向いてしまったのでした。



 すべて行事を終えて壇を降りた私を、従事長は誰からも見られない場所へと連れて行きました。


 そして、異常なまでに慎重に辺りを確認し終えると、侍従長は私に真剣な目を向けて話し始めたのです。


「先程見た事を決して口にしてはならない」


「はい。しかし……」


「しかしも、かかしもない。あれは紛れもない我らの王なのだ」


「中が」


「見えたのか?」


「少しだけ」


 王様の首の後ろに付いていたもの。それは言うなればファスナーみたいなものでした。しかも中が覗ける程度に開いて。



「よいか、我々はようやく事を成し遂げたのだ」


 侍従長の言わんとする事はもちろん理解できます。


 百年続いた戦乱を収め、平和と豊かさをもたらさんとする偉大な方の秘密。


 万が一この事が漏れたりすれば、世が再び混乱に陥っていくのは間違いないのですから。



おわり

※ファスナーの中は、なんかフサフサしていました。

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