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2回目 風刺家電

ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。  パカッ。

「ゴホッ、ゲホッ、ワシも年かのぉ。このところ息苦しくてイカンわい……と、エアコン殿が仰っているようです」


「そう言われれば、確かに音が大きくなったような気がするなぁ」


 エアコンの不調を察知した彼。実は先程自宅に届いたばかりの、新品にして最新型のアンドロイドです。


「ちょっとフロントパネルを開けてみてもいいですか?」


「あぁ。構わないけど」


 一旦スイッチを切ってから開けられたフロントパネルの内側は、


「あっ!」


 まるでフェルトの様になったホコリで、一面が覆われていました。


「これではエアコン殿も息苦しい筈ですね。掃除機をお借りします」


「う、うん。頼むよ」



 一緒に居ても気にならない相手。望むのは、恋人よりむしろ相棒。


 アンドロイドをパートナーとして迎えるにあたって、あえて同性を選んだのは、そんな関係にあこがれてのことです。


 オーダーの際には、私の性格や趣味嗜好、生活パターン等を二千項目にわたってインプットしましたので、届いた時には既に旧知の間柄のように感じられたのでした。



「すみませんマスター。今度は掃除機殿が、お腹一杯でもう何も食べられないと申しておられるようです」


「まさか」


「開けてみました、やっぱりゴミが一杯ですね。まずはこちらを片付けましょう」


「すまない」



 その後、テキパキと掃除機とエアコンの手入れを済ませた彼にお礼をいうと「同じ機械ですから、私には家電の言葉がわかるんですよ」という返事が返ってきました。


「まさか~」


「いえいえ。たとえばですね、こちらのテレビ氏。『俺はラジオじゃねぇんだ。画面も見ないでスマホばかりいじっているなら付けてんじゃねぇよ。電気代がもったいないだろ』と仰っておられます」


「あ、いや、まぁ。その、申し訳ない」


「あと、こちらのビデオデッキさん。『いつ見るんですか? 未視聴の番組がもう数十件たまってるんですけど。ホントは私なんか気にもしてないくせに、人に用を頼むだけ頼んでおいて。気のあるそぶりなんかしないで欲しいわ』と仰っておられます」


「ごめん。近々観る予定にしてたんだよ。いや、マジで」


 ペポパ、ペポパ、ペポパポン♪


 その時、電子レンジが調理を終えたという音を鳴らしました。


「レンジ様は『俺は人に例えたら、大使館付きの料理長並の実力の持ち主なんだぜ。スチームも使えるし、中華からフレンチ、イタリアンまで、様々なメニューに対応しているっていうのによぉ。それがどうだ?与えられる仕事といったら総菜か弁当の温めだけなんて』と申しております」


「あ、あ、明日から料理を、覚えてみようかなって思ったりして……」


「あと、後ろのIHコンロ君」


「あっ、ごめん! カバンとか、箱とか乗せちゃってたね。すぐどかすからね。いやー、やっぱり料理くらいは覚えないとな。明日から。ハハハ」


 そう言いながら、私はアンドロイドの彼に耳打ちしました。


「もう家電の通訳はしなくていいから。これ以上聞かされると、俺の心臓がもちそうにない」


「マスター、ご心配なく。今までのはすべて私の冗談ですから」


「へ?」


「マスターの性格はすべてインプットされてますから、たぶんそうなんじゃないかなーって思って、言ってみただけです」


「ぬおーっ!真っ先にお前をスクラップにしてやるぅ!」




おわり

※優秀過ぎる相棒が隣にいると、劣等感ってどうなんでしょうか?

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