12回目 世界が闇に閉ざされた日
ガチャチャチャ、ガチャチャチャ。ゴトッ。 パカッ。
今なら、人々が苦しむ悲鳴を聞いて快感を覚える悪魔の気持ちも理解できるような気がする。
あるいは、すべてを破壊して一から世界を作り直そうという魔王の気持ちもわかる気がする。
他人が喜んでいる姿をには虚無を感じてしまう。
無表情でスマホを見続け、周りに一切関心を持とうとしない態度には怒りを覚える。
そんな僕は、例えば次の瞬間に世界がどうにかなってしまったとしたら……案外救われるのかもしれない、なんて考えてしまう。
悟られてはいけない。この絶望を。この若さで人生を終えてしまったことを……。
僕は自然に振る舞えているだろうか。
笑顔が引きつってはいないだろうか。
家族にだけは心配をかけたくないんだ。ここは僕の最後の安らぎの場所であって欲しいから。
人生でただひとり、この人と決めていた相手に告白して、断られてしまった。
この先の長い、長い、長い余生を想像すると、絶望以外にはありえない。
僕は今後一体何を支えに、どのように生きて行けばいいのか。
……と、考えた時から35年。
どうやら息子も、あの時の私と同じ絶望を、今味わっているらしい。
おわり
※すべてを闇に閉ざそうとしても、世界は君が思っている以上に広いんだよ。