表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

逢魔が時の女学生

「ねぇ、逢魔が時って、知ってる?」


 学校帰りの川沿いの道。スカートをふわりと回し、こちらを振り向く友達。

「あー。ちょうど、今みたいな?」

 自転車を押しながら、私は答える。


 薄闇に浮かぶ、奇怪な入道雲。夕日の朱色は、迫る夜を押し止めている。・・・・・・ようにも見えた。

「こういう時って、なんか出そーじゃない?」

 などという友達の、オバケのポーズが微笑ましい。

「よしなよ。そーいうの。言うと『出る』って、言うよ?」

 信じてもいない迷信。二人でクスクスと笑う。


『おーい』


 対岸で、誰かを呼ぶ、誰かの声。

 そちらを見る。

 私たちと同じように、先を歩く誰かが、自転車を持って立ち止まる誰かを、呼んでいた。


 少しのシンパシー。

 彼女たちも、オバケの話をするかもしれない。そんな予感。


 すると、友達が口元に手を当て、私に内緒話をしてきた。

「見て見て。あの人とか、怪しくない?」

「それは流石にやめなー?」

 友達のやり過ぎな悪ノリに、呆れて注意する。


 私たちを挟んで、川と、反対側。高架下の暗がり。友達が小さく指さすところには、白いパーカー姿の男性がいた。

 通過する電車の影が、モノクロ映画のノイズに見える。

 目深に被ったフード。こんな季節に長袖の服。彼の扱うスマホの明りでは、フードの中の顔さえ、窺い知れない。

 確かに、怪しさはある。


(あれ?)


 だが私は、怪しさとは別の、違和感に気付いてしまう。

 スマホの明りが、フードの内側を、照らしているのだ。

 顔は昏く、影に覆われているのに。


 スマホを見ていたフードの頭が、ゆっくりと上がる。

 夕日は、最後の報せとばかりに、朱く、紅く、赤く、その光を細めていく。

 警告の光が、私の心臓を刺し、早鐘を打つ。

『みるな』 『にげろ』 『はしれ・・・・・・』

 鼓動の命令に反して、動くことも、顔を背けることも、出来ない、私。

 彼の顔が、こちらを・・・・・・。


「おーいって!!」


 肩を掴まれ、驚く。

 先を歩いていた友達が、心配して、駆け寄って来てくれたのだ。


(あれ?)


「ずっと声かけてるのに。めっちゃガン無視じゃん?」

 対岸を見る。

 私たちに似た、誰かなんて、どこにもいなかった。

「おーい。まだぼーっとしてるー?」

 ぞわぞわと、得体の知れない何かが、手先から全身に這いまわっているような、感覚。

「ううん。何でもない。行こ?」

 私は、ソレに、気づかぬフリをした。


 口に出したら、本当になるような気がして。

X(twitter)のお友達に、マシュマロとして送ったもの。それを少し修正してみました。


ところで、私はタイトルに『女学生』といれました。

個人的なニュアンスなのですが、『生徒』とした場合は「先生と『生徒』」「どこそこの学校の『生徒』」という、教える立場とセットのイメージを持ったからです。


『女学生』であれば、関係のない第三者から見ても、正しく学生だと伝わりますね。

はて?関係のない第三者とは、作者の私か、読者の皆様か、はたまた・・・・・・、何者でしょうね?


みなさま、逢魔が時には十分、お気をつけください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ