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「ふ〜ん…だから今日は監視されてるんだ〜…。」
「まあ…な…はあ…。」
クレスはアメリアのもう一人の妹であるセーナののんびりとした言葉にため息を吐き、視線をそっと送る。
…本当に迷惑な話だと。
「…ところで、シュトラ嬢、授業の方はよろしいので?」
メイドに膝枕なんかをされたクレスが、対面に座りお茶をしているミリアにそう声を掛けると、彼女はカップをカツンと置いて、落ち着いた様子で口を開く。
「問題ありません。これでも学年でトップクラスの成績を収めておりますので。」
まるで語尾にあなたとは違ってなんて言葉がくっついて来そうな口調。
クレスがもし余程鈍感、あるいは馬鹿ならばこんなことに気がつきはしないだろうが、なんとも厭味ったらしいことだ。
折角の休みだというのに、本当に気が休まらない。
「はあ…。」
いったい本日、何度目のため息だろう…って…。
「…そういえば、セーナ、お前なんでここにいる。」
「……なんのこと?クレス様?」
なんのこと?そんないつもとは違ったはっきりとした口調になるということはわかっているはずだ。
なぁ、セーナ?
「わ、私はクレス様に仕えているメイド。いついかなる時も付き従うのが当然の…。」
「セーナ?」
「うっ…。」
じーっとセーナを見つめるクレス。
そして…。
「セーナ、サボりはいけない。そんなんじゃ、いい大人になれない。」
「うっ…だって…。」
「だってじゃなくな…。」
まあ、気持ちはわからないでもない。
正直セーナは姉2人に比べてかなり出来が悪い。
アメリアは当然の如く全て完璧なトップクラス、そしてカミナは学業は真ん中くらいながら、運動だけならば学年で一二を争う。
さらには人付き合いも2人とも問題なくこなしている。
そんな2人の妹なんてものをやっているのだ。
「うっ…ごめんなさい、クレス様…。」
申し訳なさそうに頭を下げるセーナ。
ちゃんと謝ったし、お叱りはこれくらいでいいだろう。
セーナは昨日も頑張って勉強していたしな。
たまの気分転換くらいは目を瞑ろう。
「セーナ、もういい。後で勉強を見てやるから、一緒にやるぞ。」
「は、はい!が、頑張るます。」
…頑張るます…か…ますます心配になってきた。
……あとシュトラ嬢…そのお前が言うな的な視線やめて貰っていいか…。
俺がここにいるのも、色々と事情が…。
「おおっ!いらっしゃった!いらっしゃった!!」
……なんて考えていたら、来ちゃった…本当に来ちゃったじゃないか…。
「王からの命をお持ちして参りました、クレス殿下。」