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乙女ゲーのモブなので、主要キャラと関わらなければと思っていた時期もありました  作者: 無味あり


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13

ミリアはブスッとした顔でクレスと手を組み、会場へと向けて歩いていく。


なぜ彼女がこんな顔をしているのかというと、先のクレスたちの反応が面白くなかったのだ。


実のところ、先日、リリアンに姿を見せた時、同じような反応をされていた。


『あっ…はい…まあ…普通です、お嬢様。』


これが髪を下ろす前の反応。


そして…。


『えっ…誰……あっ…お嬢様でしたか…いや〜…ハハハ…化けるものですね…これで大抵の男なら騙せますよ!結婚詐欺でもなさるのですか?』


…これが現在の髪型にした時の反応である。


確かにこれに比べれば、クレスたちの反応はまだ生易しい。


生易しくはあるのだが、こんな反応を続けられては、まるで普段の自分がダメなようで、やはり心地よくない。


通り過ぎる者、通り過ぎる者。


クレスの容姿に感嘆し、それに付随してのことだが、以前の自分にはしなかったような反応を送られ続けるのだ。


そんな他の者たちの行動まで、ミリアの素直になれない負の感情を煽っていく。


次第にクレスの腕を掴む力が強くなっていき、「痛っ!」という、彼の言葉を聞き、思わず我に返る。


「ご、ごめんなさい、クレス殿下!わ…私ったら…。」


淑女として失態である。


まさかエスコートしてくれている相手に八つ当たりをしてしまうなんて…。


ミリアがそんなふうに顔を恥じゆえに染めると、クレスは気にするなと笑い、なぜ彼女が怒っているのかと聞いてきた。


腕を力任せに握るなんてことをしてしまった手前、何も言わないという選択肢がなかったミリアは、恥ずかしながらと枕言葉を据えて、思っていたことを掻い摘んで話した。


すると…。


「ふむ…なるほど…。」


クレスはそう顎に手を当て、すぐにそれを離すと、彼の思いを教えてくれた。


「他の者はどうなのかはわからないが、俺は単に縦ロールという髪型が珍しいから、シュトラ嬢とイコールで結んでしまったのが、アナタだとわからなかった原因…というやつの1つだと思うな。」


「えっ…珍しい?」


?という疑問符からもわかるように、ミリアはその言葉に引っ掛かりを覚えた。


縦ロールって、珍しいもの…かしら?


確かに学園でも見ないし、パーティーでも…って、あら?


ミリアは縦ロールを自分以外で見た記憶を辿ってみるが、そんな存在が出てくることはほとんどない。


いや、確かに出てくるは出てくるのだが、縦ロールという髪型をしているのは、同年代や歳上ではなく子供くらいのものであり、その客観的事実がミリアに1つの答えを与える。


…も…もしかして…縦ロールって、物凄く子供っぽい髪型なのでは?


確かクリナなんかも子供の頃は縦ロールをしていた時もあったけれど、学園に入る頃にはもう…。


そんなふうな思考に辿り着いたミリアは、クレスの腕から手を離すと、思わずさらに真っ赤になった顔を覆った。


「そ、そういうことでしたのね…だからリリアンも…。」


リリアンはかねてより、いい加減縦ロールはやめろとやんわりながら教えてくれていたのだ。


それをミリアは第一王子が昔褒めてくれからと固辞し続けていた。


もしかしたらリリアンがあんなにも大袈裟な言いようをしたのも、ミリアに気がついてほしかったからかもしれない。


そんなふうに思うと、ミリアはさらに自分の汚い心が嫌になる。


「…はぁ…後でリリアンに謝らないと…。」


「いや、そこまでする必要はないとは思うが…。」


リリアンの性格上、間違いなくそれは単なる煽りである。それ以外は考えられないのだが、ミリアはやはり性根が腐っていないのだろう。そう結論づけていた。


クレスの反応に、「?」と疑問符を浮かべたミリアに、「そして…。」と彼は付け加えてくる。


「…俺の場合、実はもう一つシュトラ嬢と結びつきにくかった理由があるのだが…それも言わないといけないか?」


「えっ…ああ…できれば…。」


ミリアの反応にクレスは逡巡した様子を見せる。


すると、クレスにしては珍しく頬を赤らめるとこんなことを言ってきた。


「…シュトラ嬢が美人なのはもちろん知っているが…その…好みの髪型だったというか…むしろそんなシュトラ嬢を見てみたかった…というか…。」


「……。」


「……そういうこと…だな。」


「……。」


「「……。」」ボッ!


「な、なにを言っておられるのですか、クレス様!」


「いや…うん…まあ…気に障るなら忘れてくれ。」


絶対に忘れません!!


ミリアは口にはできなかったものの、そう内心で力強く思うと、少しクレスと距離を置きたかったのか、会場の先にある化粧室へと寄り、心を落ち着け、すっかり普段の顔色に戻ったクレスとともに会場へと入る。


「それじゃあ、行くか。」


「ええ。」


ドアマンにより両開きのドアが開かれるなり、廊下より一際輝かしく感じるパーティーの空気感に、毎度のことながら圧倒され、これもまた表には出さないが、いくらかの視線がこちらへと向き、居心地の悪さを覚えるミリア。


すると、「クレス様よ!」と、誰かが声を上げ…。


「「「「クレス様〜〜!!」」」」


と、いつの間にかクレスが囲まれてしまった。


えっ?えっ?なにこれ?


それも見事に国内の貴族ではなく海外の令嬢たちばかり。


もちろんそんな様々な国の女性たちに囲まれても、大してクレスは変わらない。…要するに先ほどのように頬を赤らめるようなこともないのだ。


…ないの…だが、ミリアは面白くなかった。なので…。


………グイッ!


…ミリアは先ほどより強くその腕を掴ん…いや、今度は思いっきり抓ってやると、ようやくクレスはこちらへと気がついたらしい。


「っ!!……シュトラ嬢?」


話の内容を聞く限り、クレスは完全にあしらっていただけだとはわかっている。それにこのようにそれなりに相手をすることが外交に役立つことがあるということも…。


もちろん。もちろんミリアにもそれはわかってはいるが…。


「フン!」


…こんな反応になるのは、ミリアの心情からすれば無理ないことだろう。なにせ今日、エスコートしてもらうのは彼女なのだから。


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