表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女の裏の顔が怖すぎる  作者: 解氷
5/6

先生

そんな訳で。

呼び出されました

正直、心当たりのない呼び出しが一番怖い

俺の場合友達がいないため、自分が原因であることがこの時点で確定している

そのため内容が何であれ、胸騒ぎは常人よりも大きなものになるのだ

 嫌だなぁなんて思いつつもガン無視するメンタルもないので、ちょっとゆっくり向かって時間を先延ばしにするという世界一ださい妥協案を強行することにした

しかし、所詮は先延ばし

如月先生は俺の姿を確認するとひょいひょいと手招きをする

そんな感じで、俺はあれよあれよと言う間に先生のもとにたどり着いてしまった

 「あの、俺なんで呼び出されたんですかね」

俺は心のなかで説教でないことを祈りつつ如月先生に質問をした

すると如月先生は気軽そうに言葉を並べた

 「あぁ、別に明暗が何かしでかした訳では無いから安心しろ」

そして、遠い目をしながら付け足す

 「むしろ、私からのお願いかな」

お願い・・・・

俺がその言葉の意味を測りかねていると、如月先生は意地悪そうな表情をつくっていた

 「唐突かもしれないが、明暗は友達とかはいるのか?」

 「いませんよ。あなたわかって聞いてるでしょ」

即答してしまった

 俺の返答を受け、如月先生はしめしめといやらしい笑みを隠しきれない様子でありながら、表面上は取り繕ってわざとらしく驚く

 「そんなことはない、心底意外だ。しかしそうか・・いないのか・・・。じゃあもってこいだな」

何がだ

 「よし。じゃあ先生が今日から君に特別な課題を与える」

なぜだ

 「今日をもって、君を補佐係に任命する」

何だそれ

 「なんすかそれ。任命も何も聞いたことない学級役員なんですけど」

なんだよ補佐って。まぁ別に俺は主役って感じでもないから、ある意味似合ってなくはないかもしれないとまではいえないこともないけどもさ

俺の疑問に対し、如月先生は呆れた様子で首を横に振る

 「そりゃそうだ。私が今作ったのだからな」

今作ったのかよ

 如月先生はこほんとわざとらしく咳払いをした上で

 「では、具体的な仕事内容を説明しようか」

と片目を閉じて笑みを浮かべた


***************

如月先生の説明がひとまず終わった

 大体の話をまとめるとこんな感じ

補佐係とは色々な人を支援する係らしい

例えば成績が悪い生徒に勉強を教えるとか、何か学級関係の仕事が溜まっている生徒を支援するとか

 つまり、言い換えれば雑用だ

え、俺いつの日からこの学校の奴隷になったの?なんか悪いことしたっけ?くそう!潔白を証明したいけど友達という名の証人が一人もいない!

 俺がぼっちのデメリットを初めて認識している最中、如月先生は苦いものを見るような表情をしていた

 「しかし、明暗はコミュニケーションが苦手だからな」

まぁ、得意ではないな

俺はどんな人との会話でも二言ぐらいで途切れてしまう

 何かしらのきっかけがないと人と話さないので、そのきっかけを消化しきったあとにはもう話のネタはなにも残らない

 そもそもコミュニケーション力の良し悪しは何によって決まるのだろうか

コミュニケーションは他人がいて初めて成立するというのは当たり前だ

つまり、自分ひとりでは作り上げることができないはずだ

言い換えるならコミュニケーションは自分と相手の共同制作過程を経て成立するのではないだろうか

そんなコミュニケーションにおける個人の力、なんてものは所詮相手と共有して成立しているに過ぎず、純粋な意味での自分個人の力というにはいささか疑問が残る

とはいえこれは良し悪しの話

俺が苦手意識を持っているのは紛れもない事実だ

 しかし、補佐係という専属の役職を作らなければならないほど俺のクラスは荒れているのだろうか

俺の交友関係の広さでは判断できない部分が大半なので、確認はしておきたい

 「というか、そんなにこのクラス荒れてるんですか?いや、全員が普通に過ごしてたらぶっちゃけ補佐係なんてすることないと思うんですけど」

 俺が質問をすると、如月先生はしばらく考える素振りを見せる

そして、あることに気がついたようにこちらを見てきた

 「ホントだ。全然ないな」

全然ないらしい。なめとんのか

 「なんですかそれ。じゃあやる意味ないじゃないですか」

仕事をふるならもう少しマシな振り方があるでしょ。それとも教職はこんな振られ方しかしないのだろうか。だとしたら教師にだけはならないでおこう

 俺が昨今の高校生としては珍しく、自分の将来像を絞っていると、如月先生の口から大きなため息が漏れた

 「冗談だよ。まったく君は自分の仕事を避けることには手を抜かさないな。ここで適当にわかりましたとか言ってくれると私も楽なのになぁ」

 結構な言われよう。というか最後の方、本音漏れ過ぎだろ・・・・

俺のニート魂が通じたのか如月先生は観念したように続ける

 「正直補佐係というのは君を納得させるための建前だったんだが・・・・流石は明暗、建前すら納得しなかったな」

 なんか俺がめちゃくちゃクズみたいな言い草だな。俺がメンヘラならあんた殺してたぞ

まぁ俺自身、自分がクズではないとは言い切れない部分もあるのでそれは置いておくとして、建前という文言が引っかかるな

 「建前って・・・本当は何やらせようとしてたんですか」

補佐係ですらめんどくさいのにそれ以上とか俺社畜すぎん?公務員でももう少しはマシだろ

 俺のなじるような視線に対し、先生はなにかバツが悪そうに視線をそらして言葉を漏らす

 「いや、実はね、クラス内で最近だいぶ疲れている子がいるんだよ」

ぼっちは察しが良い

 例に漏れず察しのいい俺もここで清楚系黒髪ロング美少女が思い浮かぶ。しかし肝心の名前が思い出せないので先生の口から引き出す方向性にチェンジします

 「あ、あれですか、あいつですか・・・あの例のあの人ですね」

 「月明だ。おい明暗、いくらなんでも名前覚えるの苦手すぎやしないか?」

如月先生は少しドン引きしていた

いや、違うんですよ・・・最近の女子高生達は名前が似すぎてましてね・・・

俺が昨今の親のネーミングセンスに心中で苦言を呈していると、如月先生は意外そうな表情をしていた

 「しかし名前は思い出せなかったとはいえ、明暗が他人に心当たりがあるとは珍しいな。月明となにかあったのか?」

割と鋭いところをついてくる。流石は教職員、生徒の行動の細かい変化も見逃さない。そこにシビれるあこがれるゥ!

 しかし、この質問に俺はどう答えるのがベストだろうか

俺は現在、月明から学級業務への愚痴に関する口封じを依頼、もとい命令されている

それに従うのであれば、ここでは適当に煙に巻くべきだ

 けどなぁ

こっからは俺の予想になるけど、多分如月先生は月明の本音に気がついている節がある

 今日の朝の俺と月明と如月先生との間で交わされた会話の中でも微妙に心配してたし、気づいてないにしても気にかかる部分はあるのかもしれない

 そしてもし本当に気がついてるなら、俺がここで適当なうそぶっこいてもあんまり効果を見込めない

 めんどくせぇな

 「いやぁ、まぁなんとなくですけど見てて大変そうだなーって思ってたんで。なんかいつも忙しそうじゃないですかあのひと」

とりあえずクラスで見かけたという体でいよう

 まぁ俺もクラスメイトだし、教室で見かける事自体は何回かあったので別に嘘ではない

物事を隠し通す上で大事なのは嘘をつかずにどれだけ本当のことを言わないかだ

嘘さえ言わなければ相手は俺を攻めることができないからな

 俺が勝ちを確信していると、先生が何か納得したようにうなずいていた

 「そうか、なら明暗が補佐係で適任だな」

・・・・あれ?

俺、いつの間にか適任とか言われてるんですけど

 「なんでそれで適任なんですか、意味わかんないしやりませんよ」

まったくどういうことか意図がつかめない。これも俺のコミュ力が原因だとしたら、コミュニケーションむずすぎだろ

 俺が戸惑い混じりに抗議するも、如月先生はやれやれと肩をすくめるばかりだった

 「明暗、このクラスには今解決すべき問題がある、何かわかるか?」

そういうと如月先生は俺の言葉を待つように目を見据える

 いくら俺でも流石にこの話の流れで分からないことはない

 「まぁ、月明の負担軽減とか言う話ですかね」

まぁ、これしかないわな。っていうか現状、月明以外のクラスメイトがわからないから俺の切れるカードはこれぐらいしかない

 しかし、如月先生は引っかかったと言わんばかりに口角を上げていた

 「まぁ、半分正解で半分不正解といったところかな」

半分不正解・・・か

 俺がぼっちだから関わらないだけで実はクラスメイトには月明みたいなやつらがわんさかいるのかもしれんな

俺がそんなふうに予想を立てていると如月先生は俺の方をまっすぐ視界に見据えてきた

 「確かに月明の件もそうだが私はそれ以上に問題視している事がある」

それ以上!?

 「それは明暗、君自身の更正だよ」

俺!?

まじか

 「それ、どういう意味ですか」

俺、実はめちゃくちゃ印象悪かった?うわっ、俺の印象悪すぎ・・・?

 先生は月明のとき以上に真剣な表情で述べる

 「明暗はずっと一人でいるがそれが果たして正しいのか、私はいま判断しかねている」

 そして一拍置いたあと

 「私は別に一人がいいなら無理して他人と話す必要もないと思っている。しかし、無理して他人と話すことが求められることがこれから増えていく可能性もある」

 そして先生はこう締めくくった

 「まぁ、そこまで気負いすることもない。君も高校生なのだから、少しは青春をしてみてはどうだね」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ