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「そう?そんなに美味しいって食べるなら、イライザにあげるわ。」


「え!そんなのいらないわよ!…あ。」


しまったという顔をするが、それは一瞬だけだった。


「これはソフィアのために用意してくれたものなのよ?

 食べなきゃ料理人が悲しむわ。せっかく作ってくれたのに。」



思わず本音で嫌がってしまったのをまずいと思ったのか、

イライザはにっこり笑ってもう一度言いなおした。

二つ年上だが、こういう立ち回りの良さには感心する。

だからこそ、今までイライザがしてきた嫌がらせはバレていないのだろう。



「そうね…申し訳ないと思うけど、食べたくないの。

 一口も食べられなくて残念だわ。

 少しだけでもイライザが食べてくれたら料理人が喜ぶと思ったのだけど。

 これ全部あげるわ。美味しいのでしょう?」


「えぇ…さすがに私は遠慮するわ。自分の分があるもの…。」


顔が引きつりそうになっているのを見て、耐えきれずに笑いそうになる。

ニヤッとしてしまったのが見えたのか、イライザが怒ったのがわかる。

この分なら後で文句を言いに来るだろう。うまくいった。


「…そんなに食べないなんて、毒が入っていると思っているように見えるぞ。

 この食事会を開いている父上に失礼だと思わないのか!」


イラついたのか叔父が大声で威嚇してくる。

第三王子とはいえ、側妃からうまれているからお父様とは異母兄弟になる。

どちらかといえば品のない顔で、よく何人も愛人が作れるものだと思う。


お父様とお母様は何も聞かなかったように、こちらを見ない。

仕方ないと、叔父が文句を言い続けているのを反論せずに黙って聞いていた。

何を言われても食べる気はないし、ここで殴ってくるようならもうけものだ。

もっと怒ってくれないかなと思っていたら、お祖父様に止められた。


「…ソフィアは体調が悪いようだ。

 今すぐ戻って休んでいい。」


「父上!!」


「儂が呼んだのだから、儂が許可して帰すことに何か問題があるのか?」


「そんなことだからソフィアは我儘姫だと言われているのです!

 ちゃんと躾けないとつけあがります!」


「ほほう。つけあがる、か。

 何か勘違いしていないか?エドガー。」


「私が勘違いですか?」


「お前よりもソフィアのほうが身分は上だ。

 お前には王位継承権はないが、ソフィアにはある。

 王族であるソフィアに臣下であるお前が躾けるだなど…言えるわけがない。」


「父上!?ですが、私は叔父ですよ!」


「だからなんだ。公爵になった時点でお前はもう王族ではない。

 王位継承順位は王太子のダニエルの次がソフィア、

 その次に第二王子のフリッツ、フリッツの子に続くのだ。

 お前やお前たち家族はただの公爵であって、身分の差ははっきりしている。

 これをつけあがるだの躾けるだの言っているほうが問題だ。

 わきまえるんだな、エドガー。

 反省しないようなら、お前たちはもう食事会には呼ばない。」


「「「……。」」」


叔父の顔色が怒りでどす黒くなる。

その隣で公爵夫人もイライザも目を吊り上げた。

それでもお祖父様の言っていることは正しい。

違うと思っていたとしても、言い返すことはできないだろう。


お祖父様が一喝したことで食事会はそのまま続いている。

三人とも静かに食べているが、怒りがおさまっていないのがわかる。


お祖父様…もしかしてわざと三人を怒らせた?

まぁ、そのほうがこちらとしても助かるけれど。

何も気が付かなかったふりして部屋に戻ろう。


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