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あれ、なんで私ここにいるんだっけ。
なんだかよくわからないけれど、身体が痛い。…お腹が空いてる?
ぼんやりしていた視点が急にはっきりしたように思い出した。
今からちょうど200年前に亡くなった魔女が前世だったと。
元は伯爵家の令嬢であったが、魔術の研究を重ね未婚のまま魔女として生きた。
あの頃、もう動きにくくなってしまった老婆の身体を嘆き、
これほどまで人生をかけて魔女の知識を得たというのに、
寿命で死んでしまったら無になることを恐れた。
ついでに、もう少しやりたいことをしておけばよかったと後悔した。
ちょっとくらい幸せになっても良かったんじゃないかなって。
だから、生まれ変わってもこの知識を持っていたい。
できれば…最初から幸せになるような家に生まれたい。
そう願って転生したはずだった。
なのに…どうしてこんな状況なのだろう。
ソフィアは七歳の誕生日を迎えたばかりの第一王女だ。
小さい手を見るとあかぎれだらけで、折れそうなほど細い。
周りを見渡すと、王女の部屋なのに狭いし家具が寝台しかない。
ドレスは陛下に会う時の一着だけ。
普段は使用人が置いていった私服をもらって着ている。
おかしい…陛下であるお祖父様の孫で、王太子であるお父様の唯一の子なのに。
この裕福なユーギニス王国の王宮なのに、私のいる西宮には使用人すら近寄らない。
私専属の侍女どころか、お世話をしてくれる使用人すらいない。
今自分が置かれている状況を一つ一つ確認し、結論を出す。
ここは腐っている
今すぐ王宮を飛び出したとしても生きていけるが、捜索されるとめんどくさい。
王女であるソフィアの魔力は登録されているだろうから、
外で暮らすにしても魔術を使う度に場所を特定されかねない。
ならば…出ていくにしても許可をもらってからにしよう。
このありえない状況を訴えた後も私を放置し、
なおかつ王宮から出てもいけないなどと言われたときには…
王宮ごと破壊して出ていこうかな。