緊急メンテと仲間たち
「みんな、これから緊急メンテあるってさ」
「急な話だね、リーダー」
「お知らせはちゃんと読もうよ、ファイターさん」
ファイターがリーダーに聞き返すと、もう一人が声をかける。
「わかったよ、スカウトさん。えーっとお知らせお知らせ」
ファイターはメニュー画面を呼び出す。
手元に青色の画面が現れ、操作する。
「夕方までじゃん!」
「色々見なおすんだって。職とか」
「正式サービス近いからサーバー増やすともあるね」
驚いているファイターに、リーダーとスカウトは声をかける。
「お昼近いしそろそろ落ちよう。また夕方に」
リーダーに言われ、全員ログアウトする。
「緊急メンテかあ……ってドアホンだ。誰だろ」
「石髙さんの家でしょうか?宅配便です」
「あ、はーい。今行きまーす」
スカウトはヘッドセットを外し、玄関に向かい荷物を受け取る。
「たまには外に食べに行くかな」
昼食を作ろうと冷蔵庫を開け、中を覗くと石髙は外に行こうと決めた。
(外食してそのまま出かけちゃおう)
石髙は出かける準備を整え、家の外へと向かう。
家の外からは海が見える。
そよぐ風から磯の香りを感じ、石髙は自転車に乗って町に向かう。
「せっかくだし釣りにでも行くかな」
昼食後の予定を決める石髙。
「なら、海鮮丼でも食べに行こうか」
家から町までの緩やかな坂道を下りながら、石髙は食事を決める。
町の食事処で海鮮丼を食べ、そのまま海に向かう。
釣り道具をレンタルして海沿いの釣り堀に到着する。
「さて、釣るか」
石髙はルアーを遠くに飛ばし、椅子に座った。
待つ。待つ。ひたすら待つ。
(こういう時間って好きなんだよな……弓の狙撃とかと似ているし)
ピクリと釣り竿が動いた瞬間に力を入れ、魚を釣り上げる。
「そこそこ釣り上げたし、帰ろう」
それなりの釣果をあげ、釣った魚をスタッフに預けた。
代金を支払い、石髙はお土産を見ていく。
(フグの卵巣のぬか漬けか……ゲーム内でもフグ釣れたよね)
魚は今のところ換金アイテム。自分で捌いたり料理してみたいという声もある。
(肝と同じで卵巣も毒があるとはいえ、ぬか漬けするとなぜか消えるんだよね)
地元の郷土料理とはいえ、不思議な仕組みに石髙は首を傾げた。