心のミキサー少年
グッチャグッチャになった。
投入してみたら、
グッチャグッチャになった。
何もかもどうでも良い。
心にあった 真っ白いカタイものを
ミキサーに投入してみたら
グッチャグッチャになった。
おかげで 心にぽっかり穴が開いて
何も埋まらない けど どうでも良かった。
ある朝 目覚めると
別人になってたら よかったのに、
結局 毎朝 起きても
自分は空虚な自分のままだった。
ぽっかり 穴のあいた自分だった。
鏡を見ても 穴があいてる。
むしゃくしゃして 少年は
ぜんぶぜんぶ ミキサーにぶちこむ。
褒められた言葉も 貶された言葉も
ミキサーで グッチャグッチャにして
混ぜ込んだら 見分けがつかなくなった。
バレンタインに 貰ったチョコも ぶち込んだ。
貰った誕生日プレゼントも ぶち込んだ。
SNSで傷ついた言葉も ぶち込んだ。
悲しい言葉も 嬉しい言葉も
わからなくしたら 良かったのだ。
深夜 目が冴えると
この世に自分しか いないように感じる。
手を胸に当てると 穴があいてて 触れない。
空っぽを掴んだ手は 自分をすり抜けて 空気に触れる。
ミキサーにぶち込むものが もうない。
初めて焦る。
グッチャグッチャにしたいのに
こんなに したいのに
空っぽすぎて もう 何もない。
自分がゼロになったことを知る。
少年の手は 透明になって
やがて全身を回って 誰にも見えなくなった。
真っ白い カタイもの
心の一番 大事なものだった。
今日も 少年は 何かを求めて さまよう
けど もう なんにもない。
少年には なんにもない。
他の人にとっても なんにもない。
やがて 自分がなにか わからなくなって
グッチャグッチャになって
紙くずみたいに 小さくなって
風に吹かれて 飛んで消えた。