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帰りたいんだが、帰れない

 翌日、朝起きると当然だが、鎧が無かった。


 そう言えば、昨日持っていかれたんだった。


 村の中をうろついてみるが、木の上で生活しているようなことは無く、普通に切り拓かれた場所に家が立ち並んでいる。


 どうやら畑もあるらしいが、なぜか水浸しだった。


 なぜだろうと思ったが、二ホンの知識によると水田と言うらしい。そうか、アレが散らし寿司の粒々の正体、コメって奴か。


 湿地を利用して作られているので、総面積が無い土地の割には水田は立派に見える。


 めぼしい所を見て回った俺はリーアを起こしに戻ったが、すでに起きている様で、部屋には居なかった。


「ナンガデッキョンナ」


 そう言って挨拶だろう、声を掛けられて振り返ると、昨日のイケメンだ。


「おはよう。リーアを知らないか?」


 そう聞いてみた。


「リーア?ああ、ロリと射場だ」


 理解できる言葉が返って来た。


 なんと、僅か一日で最低限の会話が可能なレベルになっているらしい。


 イケメンの名前はオロフというらしい。


 彼に射場へと連れて行ってもらうと、昨日の少女とリーアが弓を射ているところだった。


 リーアも昨日のような無茶な事はせず、普通の矢を放っているし、少女も今日は爆発させていない様だ。


「ロリはキザカライ多い」


 そう言ってため息をついているが、ちょっと何のことか分からない。


 しばらく眺めていたが、こちらに気が付いたらしい。


「オドもやれ!」


 少女が俺を指さしてそんな事を言う。


 どうやら俺も弓を持てという事らしい。


「ガエル、ロリちゃんが競いたいみたい。ガエルの弓持ってきてるよ」


 用意が良い事に、リーアがそんな事を言ってくる。


 オロフを見ると、諦めたようにため息をつかれた。


 リーアが準備しているので断る訳にも行かず、リーアと並んで、・・・・・・矢は?


 矢を探していると、リーアが手渡してくれた。


「この矢を射るのって結構疲れるね」


 まあ、そうだろう。弓を引くだけでも魔力を使うのに、それに加えて矢にまで魔力を要する。疲れないはずがない。


「彼女は元気そうだな」


 そういって、俺は少女を見た。


「オトらよりも力があるからだ。ヘラコーない」


 どうやら、魔力量が俺たちより多いと言いたいらしい。たぶん


「そうなのか。それで魔人と呼ばれてるのか?」


「マジン?」


 どうやら、魔人が伝わらないらしい。


「力が多い人だ」


 と言うと、なるほどとオロフが頷いてくれる。


「ヨモヨモセン!」


 少女は俺たちの会話がお気に召さないらしい。


「分かったよ」


 集中して、弓を引き、矢に魔力を流して矢じりと矢羽根を出現させる。


 こういうやり方にはリリーサーよりも弓掛かなとふと思ったが、無いものねだりをしても仕方がない。


 息を整えて放つと、何とか的のかなり中心に刺さってくれた。


「ん~」


 昨日の事があるからか、どうにも納得がいかない少女が唸っている。


 リーアもかなり中心にまとまっているのを見ると、どうも勝負がついていないという事なんだろう。


「モッペンモッペン」


 催促する少女に促されながら、手持ちの矢を射る。


 5本中、なんとか4本を中心付近に纏める事が出来た。


「ショーらしわ」


 という少女。どうやら感心しているといった風。


「ロリちゃんは弓が得意で、昨日の爆発みたいな事が出来るのが自慢みたい。突然来た私たちの弓の腕が気になってしかなたいみたいだね」


 と、完全に妹を見る目になっているリーアが教えてくれた。


 さすがに爆発は特殊なんだろうか、オロフに来てみる。


「あれは、カイナイ。マンではできん」


 全員は無理と言う事らしい。村でロックボア弓が引ける人数が限られている状態に近いのかもしれない。


 もう一勝負とリーアにせがむ少女に付き合って、しばらく俺たちも弓の練習をしていたが、ホント、これは疲れる。


「ダイナー」


 どうやら、連続で射続けていた少女も付かれたのだろう。肩を落としてないか言っている。


 何だかんだでリーアに懐いたらしいな、この子。


 そして、オロフに促されて食事へと向かう。


 どうやら、コメらしい。


「昨日の粒々だね。でも、甘くない」


 何とか使える箸でご飯を掬って食べたリーアがそう言う。


 そりゃあそうだろう。昨日の散らし寿司は酢飯だもんな。これはご飯だから、当然だ。


 そして、茶色のスープを飲む。二ホンの知識にある味噌汁だろう。ただ、具が違う気がしないでもないんだが。


 食事をして和んでいて思い出した。


「そう言えば、革鎧はどうなってるんだ?」


 オロフに来てみると、ついて来いという。


 そして、村を出て少し行った先にもう一つの村があった。


 村というか、工房だな。


「ナンガデッキョンナ」


 そう言って中をのぞくオロフ。


「オロフ、つっぇて来たんか」


 工房から一人出てくる。


「ウマゲナわ。ケッコンショルケン」


 そう言って、見せてくれたのはリーアの革鎧だった。


「なんか増えてる」


 リーアが首を傾げながら言う。


 たしかに、金属か木の棒が追加されているが、何だろうか。


「あ、ちょっとコマ」


 そう言って、俺とリーアを手招く。


 何だろうと近づいていくと、なぜか身長や手足の長さを測られた。


「明日ん出来るケン」


 良い笑顔でそんな事を言う。


 どうやらもう一日待つ必要があるらしい。 

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