歓迎されたんだが、言葉の壁にぶつかった
鎧を持ち去られて、弓や槍についても意味不明の言葉と少し分かる言葉を交えて色々聞かれた。
「ヤンマか、ウマゲなコッサエや」
と、感心している様だ。職人だろうか。
そして、最初に遭遇した人たちは弓を持って俺たちに来いと手招きしている。
「キマイキマイ」
そんな事を言っている。来いって事らしい。
そして、あれを狙えと、何か的らしきものを指す。
「何だろう。トルチェ?」
リーアがそれをみてそんな事を言う。
「これ、ツコテンマイ」
と、木の棒を差し出す。
木の棒なんかどうすんだ?
「ミマイ」
美人がそう言って弓に番える。
すると、薄っすら矢羽根や矢じりらしきモノが浮き上がって来るじゃないか。
「魔法の矢かな、アレ」
リーアが聞いてくる。きっとそうなんだろう。原理が分からないが、頷いておく。
放たれた矢が的に命中した。
腕の良さはまさにエルフって種族で間違いないだろう。弓の名手らしいしな。
「おお、すげぇ」
俺たちが驚いていると、美人がニコニコ「テンマイテンマイ」と言っている。
ありがとうって事か?
そして、俺に魔法矢を渡してきた。
多分、やる事は同じはずだ。しかし、より一層難しいな。弓を引くだけじゃなく、矢にまで魔力を必要とするとは。
魔法矢を番えて、弓を引く。そして、矢もヴィントリべレの矢じりを思い描きながら集中する。
何とか出来たのでそれを放ってみたが、的が少し遠い。
真ん中ではなく、随分端の方へと当たったようだ。
「おお~」
エルフたちも感心しているらしい。
そして、リーアの番だ。
「ヴィントリべレの矢じりかぁ」
などと言いながら、集中している。
いや、リーアさん、それは矢じりやなくて槍の穂先やん?
なんだかデカイ矢じりを備えて矢が出現した。
「ガイナわ」
という声が聞こえた。まあ、たしかにすごいよ。
放たれた矢は真ん中とはいかなかったが、俺より良い位置に当たり、的を破壊した。
「ガイナわ~」
唖然とする俺と違い、ただ感心するエルフ連中。
「槍の穂先でも飛ぶんだね」
ケロッとそんな事を言うリーアが怖い。
何だか負けん気の強い、少し幼さの残る美少女が集団から出てきて、別の的を狙う様だ。
「ミマイ!」
と、リーアに対抗意識を燃やして何か宣言しているらしい。
そして、何やら普通の矢じりではないモノを出現させてはなった。
「何だろう?矢じりが太い?」
リーアが首を捻るうちに矢が的に到達して爆発した。
そして、リーアをドヤ顔で見る少女。
「凄い凄い!」
リーアも少女を褒めている。
が、少女はそれが意外だったらしく、目をそらしてブツブツ言っている。
「ロリ、シケとる」
エルフ集団からそんな声が聞こえる。
「ヒニシルデ!」
ロリと呼ばれた少女が何かむきになって叫んでいるが、それを聞いてわざとらしく怖がる面々。
「ロリ、ウマゲやろ」
と、美人が話しかけてくる。
きっと、凄いって事だろう。
「凄い魔法使いだな」
と、答えると、ウンウン言ってるので、そう言う意味で合ってそうだ。
そして、的が何で出来ているか聞いてみたら、リーアの言う通りトルチェの甲羅らしい。
トルチェって鎧みたいな亀やで?いとも簡単にそれを貫く魔法矢って凄すぎる。扱えた俺達もチート級かもしれんが。
魔法矢が扱えたことで更に歓迎されることになったらしく、今日は泊っていけ的な話を始めたらしい。
「ドーやブリ!ドーやブリ!」
と何人かが言い出した。何それ。
確かに、アレコレやっていたからすでに昼を過ぎている。今から出発するには遅すぎるだろう。
「コレ、なんだろう?」
目の前に置かれた器に白く長細い物がたくさん入っているがよく分からない。
そして、そこに黒い液体と透明な液体を垂らして、香草だろうか、葉物を散らして、なにか木の根みたいなものをすりおろしてふりかけられた。
食い物であるらしい。
二ホンの知識を頭にめぐらしてみるとヒットした。うどんという食べ物だ。
さらに、何か白い粒がたくさん入っている桶が用意された。
「タンマイタンマイ」
というイケメンの仕草を見て、やはり食べ物だと確信するが、どうやって食うんだろ?
よく分からない事が伝わったらしい。
イケメンの一人が棒を二本右手で器用に持っている。アレは知っている。箸って奴だ。そうか、箸で食うのか。
そのイケメンに促されるように箸を手にして何とか掴んでみた。
「う~ん、食べにくいね」
リーアが何とかうどんを引っかけて口に運んでいく。
俺はそれよりうまく箸を持ててはいるが、頭の中の知識ほどにはうまく扱えない。
「難しいな。これ。味は素朴な感じだ」
そして、もう一つの桶から盛り付けられたモノが眼前に置かれた。
二ホンの記憶によるとちらし寿司らしい。
「これ、何だろう?麦を茹でたのかな?」
と、リーアが不思議そうに見ている。
そして、それをこぼしながら箸で口まで持っていくと
「甘い。美味しい」
と驚きの顔だ。
「うん、美味い」
しかし、何で二ホンの知識にある食べ物がここにあるんだろう?
そして、何か肉らしきものが出て来た。
「何だろう。黄色い焼き色してるね」
その肉を骨を手にしてかぶりついてみた。
「美味いなコレ。マギアフーンかな?」
そう独り言を言ったら、イケメンが聞いていたらしい。
「オキたか?」
ん?起きる?寝てないんだが?
「オキとらん。ピッピ!ピッピ!」
不思議そうにしていると、更にうどんが追加された。
いや、もう十分です。
仕方ないのでうどんをもう一杯食べた。
中二病で実現できなかった魔法矢を登場させてみた。
弓はまあ、普通?