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第一ナントカ人発見

 目の前に現れたジャイアントベアが一頭。


 どうやら気づかれたことに気付いたらしく、威嚇してくる。


 どうするよコレ・・・・・・


「フン、ジャイアントベアだろうと、この弓に掛かれば」


 そう言ってリーアが弓を取り出して矢を番える。


 嫌な予感がして後ろを振りむくと静に近づいて来たジャイアントベアがもう一頭。まさか、熊が群れで狩りしてんの?


 そう不思議に思ったが、それどころではない。


 俺は腕を振り上げる熊へと槍を振り上げる。


 ジャイアントベアからすれば、人間の槍ごときは爪楊枝みたいなもんだろう。普通の槍ならば。だが。


 余裕で払いのけたつもりのジャイアントベア。


 だが、飛んだのはヤツの手だった。


 だが、あまりに切れ味が良すぎるヴィントリべレの羽根のせいでいたさを感じていないらしく、まだ気付かずに鋭い爪で俺を引っ掻きに来ようとしている。もうないんだがな?


「うっそ、弾かれた!!」


 こちらの状況に気付かずリーアが叫ぶ。


「かくなる上は、ヴィントリべレの矢じりで勝負!」


 どうやらこちらの状況どころでは無いんだろうな。


 俺もリーアに構う余裕なく、振り上げた槍をヤツの頭へと振り下ろした。あると思っている手の爪で引っ掻きに来ているジャイアントベアへと。


 ホント、柔らかい、豆腐やゼリーに橋やフォークを差し入れる感覚でスパッとジャイアントベアの頭へと槍が綺麗に入っていく。

 その勢いのまま振り下ろすと頭から首、胸へとほとんど抵抗なく切裂いてイケた。


 自分でもビックリするほどあっさりとだ。


「嘘だろ・・・・・・」


 そう思っていると、すでに手がない腕が眼前をかすめていく。


 俺が相手をしたジャイアントベアは、自分が死んだことも自覚できていないだろう。不自然に体が捻じれたような状態で、振り下ろした腕が肩ごと反対の型へとぶつかっていく。


 どんな状態だよこのホラーシーンは!


 そして、ようやくリーアを見る余裕が出来た。


「リーア・・・・・・」


 リーアが固まっていた。


「リーア!」


 もうイイ度声を掛けると、からくり人形のように核核とこちらを向いて


「貫通した。2本とも貫通した。立ったままだよ。って!!ガエル!どうしたの!!?」


 そう言って弓を投げ捨てて駆け寄って来た。


「ジャイアントベアの血だよコレ」


 生暖かいものがベッタリ塗りつけられたのは自覚していたが、考えないようにしていた。


「ホント?ホントに?」


 そう言ってべたべた触って来るリーア。


 それをされるがまま、俺は、最初に現れたジャイアントベアの方を振り向いた。


「おい!まだ立ってるじゃねぇか、アイツ!!」


 リーアにそう言ってみるが、きょとんとして首を傾げやがる。


「え?もう動いてないけど」


 暢気にそう言っているので改めて見た。


 確かに、それは迫力のあるはく製って感じだ。


 槍を構えて近づいてみたが、立ち尽くしてそのまま事切れているらしい。


「胸に一本、頭に一本。ヴィントリべレの矢が貫通したから。矢がどこ行ったか分からないよ」


 などと、暢気な事を言っている。


 ジャイアントベアの目前まで来ると、胸と鼻の少し上から血を流している。当然ながら、後ろに周っても穴から血が流れ出るばかりで矢は見当たらない。


 いくらロックボア弓とは言え、ヴィントリべレの矢じりは規格外過ぎだ。


 こいつらをどうするかよりも、まずは自分がぶっ掛けられた血を洗い落としたくて川へと下る。


「ナンションナー!」


 誰かが叫ぶ声が聞こえた。


 当たりを見ると数人の人がこちらを警戒している。


「ゴジャや!」


 警戒するうちの一人が叫びながら俺の近くまで来る。


「えっと・・・・・・」


 どうして良いか分からない。


「タンネとん!」


 リーアに1人がそう言った。


「え?何?何?」


 まるで理解が及ばない俺たち。


 俺の前まで来た人物はよく見るとものすごい美女だった。


「ナンかメイダン?」


 と、またよく分からんことを聞いてくる。


「あ、これはジャイアントベアの血だ。俺は元気。ダイジョウブ」


 目の前に美人にそう訴えてみると、伝わったらしい。


「ジャイアントベア?」


 不思議そうに首を傾げる姿も様になるな。


「ナンガデッキョん?」


 リーアに詰め寄る人物はかなりのイケメン。


「えっと、ジャイアントベアに襲われて、倒した?」


 なぜか疑問形のリーア。


「クマや!熊がメゲトル!」


 上から声尾が聞こえた。


「オトか?」


 イケメンがリーアにそう言っている。


「ジャイアントベア、二人で倒した」


 ちょっと片言に応えるリーア。


「クマメイダン、オレオレ」


 そう言ってみた。


 どうやら伝わったらしく、イケメンが上に状況を聞いて、二頭倒れている事を確認したんだろう。びっくりして俺たちを見る。


「ゴジャや、オッケルで!」


「オト、ガイナ!」


 美人も上になんか言っている。よく分からん。


 改めてこの美人とイケメンを観察して見ると、二ホンの知識でエルフと言うのが当てはなりそうだ。


 耳長で美男美女揃い。弓を持っている点までそっくり。


「テンマイ、クマコッサエルン、キマイ」


 と、よく分からんことを言う新たに現れたイケメン。どうやら敵対的ではない。歓迎されている?


 よく分からないが、その集団に連れられて、俺たちは先ほどの崖の見えにくい所にある桟橋を伝って、裏側へと回り込むと、そこは流れ込む支流によって形成された扇状地になっている様で、そこに何軒かの家らしきものと櫓があった。


 俺はイケメンたちに血を洗い落とされ、リーアも美女たちに囲まれてどこかへ連れていかれたが、しばらくして身ぎれいになって現れた。


 それから数時間、色々聞かれたが言葉がよく分からず、何とか理解できた単語と、こちらが教えた言葉を使って会話が成立するようになった。


「森から来たんか。ウマゲナ弓と槍や。トンボのなん」


 そう感心しているが、うん、どうやら弓と槍を褒めているらしい。


「ゾロなん、テンテンマイんあるけん、ハメテキヨる」


 何言ってるのか分らんが、鎧の話らしい。


「いやちょっと、鎧・・・・・・」


 なぜかさっさと鎧をどこかへ持ち去る人がいる。


「エエケン。ウマゲにしよる」


 何がおいしいのか分らんが、え?ロックボアの革を食うの?


 それからよく分からないまま俺とリーアは歓迎されている。

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