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冒険と言うには地味すぎるんじゃねぇ?

 俺たちは散財の後にようやく探索に出向くことになった。


「山の切れ目まで行くって本気か?」


 リーアに聞くと本気らしい。


「当然。魔人とかいう人たちを見てみたいじゃない」


 うん、おとぎ話を信じちゃってるよ。


「だからって、この荷物はな・・・・・・」


 リーアによると、山のふもとまで行こうと思えば少なくとも4日は必要だろうという。まあ、たしかにそうかもしれん。道が整備されている訳でもない山を歩くんだ。進行速度などたかが知れている。


「で、コイツまで購入する事になるとはな」


 俺は荷物と共に背負った透明な盾を見ながらため息をつく。


 リーアがどうしても山の切れ目へ行くというので野宿前提の行程と言う事で、槍や弓だけでは不安なので、盾も欲しいと言い出した。


 その為にわざわざ新たに森へ分け入ってマギアフーンやサーベルラビットを探し回る羽目になったが、何とかなった。


 街から来たハゲの強面な職人が応対してくれたのだが、非常に無口で、こちらが盾が欲しい事を説明している間じゅう、こちらを睨んでいるのかいないのか、かなり怖い顔つきで話を聞いたのち、一拍置いて、「あるよ」とだけ言い残して奥へと行ってしまった。


 出て来た職人の手には背丈と変わらない程のデカさのある盾が二枚。


「それ、かなり嵩張るし、重いんじゃ」


 と、声を掛けると、無言で盾を差し出してくる。


 受け取ったリーアが一言


「軽!」


 と言っているので、俺も持ってみた。


 加工しているはずだが、それと分からない仕上げの上に、軽さは羽根の状態と大差がない。それで強度があるのか不思議に思うのだが、これまた無言で羽根の刃とサーベルラビットの牙を加工した矢を差し出してくる。


 なるほど、それで突いてみろって事だな。


 そう判断して盾に突き立ててみるが、いつものように魔力を流して集中しているのに、羽根の矢じりは、全くキズが付けられないし、牙の方だって何とか傷が付いた程度。


 傷が付いたのを見て職人の眉が動いたが、何も言う事はなった。


 が、傷をつけたからだろう。盾二つをマギアフーン1羽で譲ってくれるという。盾一枚に1羽と考えていた俺たちへの温情か何かだろうか?


 そんな盾を背負って、ヴィントリべレの羽根の刃を加工した槍をナタ代わりに振り回して枝やツタを刈り払いながら進む。


「凄いね。この槍だと枝の感触もなく斬れちゃう。ヴィントリべレが墜ちた時に周りの木が斬り倒されちゃったのも納得だねぇ」


 などとのんきな事を言いながら歩くリーア。


 道に迷わないのかって?


 太陽の位置を見ながら歩いているから問題ない、下手に森の風景なんか頼りにしてたら帰る事さえできなくなるよ。


 もしかしたら、これが一種のスキルって奴かもと二ホンの知識が教えてくれている気がする。


 こんな山歩きするならパワードスーツとかいう便利なモノもあるようだが、如何せん、細くて丈夫で関節代わりになる構造を再現できる鍛冶師なんて村には居ないだろう。


 そんな訳で、俺たちは自分の体力のみで踏破することになりそうだ。


 途中、ロックボアやサーベルラビット、マギアフーンも見たが、極力避けて通った。


 あっちも保存料として干し肉に染み込んだ香草の匂いが嫌なのだろう、敢えて近づいてくることがない。


 だからこそ、いつもの狩りには干し肉など携帯しない。獲物が獲れなくなっちゃうから。っても、俺たち人間には特段ニオイがする訳じゃないんだがな?


 そんな行進を三日も続けた。

 

 寝るのは交互に不寝番をしながらだから、疲れがとれているかというと怪しいもんだが。


「そろそろ麓じゃないかと思うんだけどなぁ」


 というリーアの愚痴を聞きながら進む。


「木や草の種類が変わって来たからなぁ。そろそろじゃないか」


 俺もそう答えならがら枝を刈り払って前進を続けている。


 そうすると、前方が異様に明るくなってきた。


「崖かもしれんぞ」


 俺がそう注意を促すと、リーアも慎重な前進を始めた。


 しばらくするとその理由が分かった。


「川だ」


 崖である可能性は消えないので慎重に進んでいくと、どうやらそのまま河原に出たらしかった。


「随分な大きさの川だけど、どこに流れてるんだ?」


 森の北部に大河がある。その事はこれまで知られていなかった。わざわざこんなところまでくる必要性が無いから当然だろう。


 しかし、海や湖に流れ着くはずだから、誰かが居てもおかしくはない。


「なんだ、魔人じゃなくて普通に人が居そうだね」


 リーアもどこか落胆している。


 仕方が無いだろう。これだけデカい川ならば、船で遡上が可能なはずだ。だとすれば、より南方の街や場合によっては別の国から人が来ていてもおかしくはない。


 川の流れを見て、上流へと向かっていく。


 だが、そう歩くことなく河原は途切れて渓谷になってしまった。 


「何とか通れそうだが、行くか?」


 リーアにそう聞いてみると、行くらしい。


 さすが大河だけあって、渓谷なのに広くて、小さいなりに河原が続いている。


「この川、ものすごく深そうだね」


 今のところ、断崖は対岸にしかないが、いつ、こちらが断崖になってしまうか分かったもんじゃない。


「そろそろ無理っぽい」


 リーアがそう言った。


 どうやら崖に出てしまった。


 何とかなだらかなところを見つけて森へと分け入ってみた。


「ジャイアントベア・・・・・・」


 どうやら俺たちはデカイ熊につけ狙われていたらしい。


  

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