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ちょっくら冒険へ!の準備で散財してしまった

 今回の狩りに参加した連中は誰一人、俺たちの使う魔法を使えなかった。


 しかし、使えると偽ってロックボアを探しに森深くへ分け入っていたらしい。


「なんてことをしてくれたんだ!」


 村の長老衆が狩りに出た連中の生き残りに説教をしている。


 まあ、俺たちはこの場には用がないのである程度のタイミングを見計らって退席する事になったのだが、魔法使いが誰かという事をここらでちゃんと明確にしておこうという話になった。


 まず、ロックボアの革を巻いた弓が引けるかどうかで判定する。


 弓が引けるのは10人に1人レベルだった。


 次に、ロックボアの革を槍で突けるかどうかを試してみると、こちらは3人に1人は居る。


「ロックボアの革を突ける奴らだけでしばらくは狩りをやる。村まで連れて来ちまったんだ、他のロックボアが近付いて来ないとも限らんからな」


 という、長老衆の宣言でもって、狩りが厳しく制限されることになった。


 しかし、俺がロックボアを突けるようになって、みんなにそれを教えて以降、こうも拒否反応なく自然に受け入れられているのが不思議でならないが、どうやら、それはこの村が開拓村で兎に角有用なモノなら何でも欲しいからだと言う話だった。


 それに、ドリスやロイカといった村の若い指導層が使えるというのも大きいんだろう。村の若い中心メンバーが使っているのに否定しても始まらない。そんなところか。


 それだけでなく、若いという事は新しいものを受け入れやすいというのもあるかもしれない。


 村が手に入れた二体目のロックボアだが、村の狩猟チームの革鎧や弓、槍の柄に化けることになった。


「あ?んなの決まってるだろ。ロックボアなんてモンを連続で街へ持ってったら村に徴税官が来ちまうじゃねぇか。アレはたまたまだ。ヴィントリべレの羽根も、マギアフーンの羽毛も半分以上置いているぞ」


 と、職人たちが教えてくれた。そんなもんか。


 それはそうと、最近、あまり森へ深く分け入らなくともロックボアに遭遇する。やはり、村に近づいて来てるんだろうか?


 そんな不安を持ちながら、街へ行った連中が帰って来るまでにロックボアを更に二体も狩ってしまっている。


「こりゃあ、腹据えて当たる必要があるかもねぇ~」


 ドリス姐さんがそんな事を言いだす。


「一度、ある程度森深くまで探索した方が良いんじゃない?」


 リーアもそんな提案をしている。


 森の深くと言っても、どこまで行けるだろう。


 ここが僻地なのはこれ以上北上すると高い山が連なっているからだ。これ以上北には万年雪をかぶった大山脈しかない。


 日本の知識からすれば、その向こうに新たに平原が広がっている可能性も無いではないが、そんな事は王国でも誰も知らないというのが実態だ。


「あの山の向こうって何があるんだろうな」


 俺がそう言うと、長老の一人が答えてくれた。


「山の向こうか?魔人の住処らしいとは聞いたことがあるな。なんでも、王国より豊かな土地が広がっているとか、楽園だとかいう話だ」


 というおとぎ話を教えてくれた。


 もちろん、みんな笑っている。ただのおとぎ話なんだろう。


「それ、ホントかな?見てみたい気もするけど」


 リーアが冗談とは受け取らず、そう聞き返している。あまり真に受けない方が良いのにな。


「誰も見たことは無いからな。そもそも、言葉が違うから何言ってるか分らんらしい。ここからいくにはあの高い山を越えるしかないから無理だと思うが、どこかに谷で抜けられるところがあるなら、或いは」


 と言って笑う長老。


「それ面白そうだね」


 いや、リーアさん、真に受けるんじゃない。


 リーアのポンコツ発言にみんなで笑って、真剣に探索の話を再開する。 


 その後の話し合いで、それぞれグループを作って森の中を探索するという話になった。


「じゃあ、あたしとガエルで探索する。北東が良い!」


 と、リーアが言い出した。


 特に反対もなく。二人ともがロックボア弓を扱える上に、最近余り気味のサーベルラビットの牙を加工した矢じりもそこそこある状態だ。


 もう、村の中ではロックボアとサーベルラビットの価値は暴落している。なんなら、普通の革よりロックボアの革の始末をどうにかしたいという革職人とあり過ぎるサーベルラビットの牙の始末に困っている武器職人が狩猟グループに捨て値同然で鎧や矢、槍を供給しているほどだ。


 そんなに税の徴収に来られるのは困るんだろうか?


 確かに困る要素の一端は垣間見た。


 ヴィントリべレの羽根と甲殻に釣られて職人がやって来ている。


 その職人は村に30枚を超える羽根がある事に唖然としていたらしい。


 なるほど、こんなのが広まるとこういう連中もやって来て大変な事になるんだな。


 そもそも、希少なロックボアの革やヴィントリべレの羽根を売ったことでかなりの金額を受け取ったが、半分近くを税で持っていかれたらしいから、それを倍する量が動いたとなると、更なる金を求めて徴税官がやって来るって事なんだろうな。


 ヴィントリべレの羽根だが、前後の羽根の刃の部分を切り取って職人の技で繋ぎ合わせて大剣にするんだという。

 で、中央の羽根と刃を切った羽根は窓の材料。割れないガラスとして利用されるらしい。透明で強度が高くて、しかも1枚物の大窓ガラスとして使える大きさに加工できるというので貴族には人気があるんだとか。耐久性が高いから盾としても使えるが、透明な盾では矢や槍を防げても相手から丸見えなので需要はほぼ無いという。  


 切れ味の良い槍の穂先に使えるんじゃね?と、俺たちが職人に切れ端を購入できないか交渉に行ったのは当然だ。


「まあ、この村じゃ暴落しちまってるからマギアフーンの肉と交換で良いよ」


 と、どこか諦めたように俺とリーアの槍がヴィントリべレの羽根仕様へと改造された。透明な穂先ってファンタジーっぽくて良いよな。と、ニホンの知識が囁いている。鞘は当然だが、甲殻製だ。


 ついでに無理を言って、切り取る時に出る刃のクズを利用して矢じりもいくつか作ってもらった。本当ならこれだけで金貨が動くらしいが、この村では軒並み素材の価値が暴落しているのでゴミ同然だ。

 が、矢筒にそのまま入れておけないので甲殻製の底板を追加注文したのでマギアフーン3羽が吹っ飛んだ。


 俺やリーアには、それでもかなり高額には違いない散財だ。加工しておけば10日分の食料だぞ?と言うか、マギアフーン3羽分の肉って、街ではひと月暮らせる額になるそうだから、かなりの高級食材だな。

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