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二ホンの知識がどこまで役に立つか分かんねぇ

 村へ帰ってロックボアの皮を革職人の所へ持って行った。


「ロックボア?おいおい、グチャグチャにした皮持ってきてもマトモになめしたりできないぞ?」


 モノを見るより先にそう言われてしまう。


 それも仕方が無いだろう。


 ロックボアは二ホンで言えばサイが近いだろうか。硬い皮に覆われた鎧イノシシと言った風体で、槍や矢がほぼ効かないことで知られている。

 その為、狩猟対象となることは無いし、村や街に現れた場合の討伐方法は大きな石を沢山叩きつけて倒すという荒っぽいやり方をする。

 なにせ、ものすごく硬いので、少々の打撃ではビクともしないからだ。


 脚を折り、胴や背を滅多打ちにしてとにかくダメージを与えまくって動かなくしたうえで、ドスンと岩を頭に落すようなとんでもない方法が中心である。


 その為、ロックボアの革なんてほとんど流通していない。もし、革製品に加工して街まで売りに行けば、何年も遊んで暮らせると言われるほどだ。


 その希少な皮を職人に見せる。


「おい、これ、どうやって狩ったんだよ」


 驚くのも無理はないが、槍で一突きと言ったら笑われてしまった。


「まあ、これだけの上物だ、ガエルの防具くらいは謝礼に作ってやるよ」


 そう、それほどまでに価値があるって事だ。


「ついでにリーアの分も頼んでも?」


 そう言うと、笑って頷いてくれる。


 ひとまず仕事を終えて二ホンの知識について整理してみるのだが、チューニビョーと言うワードが付いて回る。

 チューニビョーワードが酷く躊躇いを齎してくるのだが、とりあえず「ステータスオープン!」と、唱えてみた。

 

 当然ながら、何かが起きるはずもない。ステータスやレベルがウンヌン、ジョブにスキル?


 残念ながら、ステータスボードなるものは出現しなかった。


 では、他にもチューニビョーワードが尾を引く「ファイアボール!」を唱えてみたが、火炎球が飛び出しては来なかった。


 色々試した結果、物体の強化や身体強化が可能だという事が分かった。


「ガエル、なにやってんの?」


 チューニビョーな事をやっているとリーアがやって来た。


 先ほどのロックボアの防具の話をすると喜んでいる。


「ありがとう!」


 なんともかわいい事で。俺たちは同い年で16だっけ?まあ、そんな年頃だ。


 狩猟に出た頃にはどこかうっとおしさもあったが、今ではこんな美少女が常に一緒に居るとかパラダイスだとしか思えないな。まな板だが。


 さて、リーアが来たのでロックボアを刺したように物体強化を二人でやってみる。


「ガエル、木の串で石を刺すって正気?」


 そう言うのも無理はない。普通に考えて出来ないことをやろうとしているのだから。


「ロックボアにナイフを刺せたんだ。出来ないことは無いだろう?」


 ちょっと挑発してみる。


「もちろん、出来るよ!」


 そう言って、「肉に串を」とか呟きながら集中しているらしい。さて、俺もだな。


 集中して石へと串を刺してみると、あら不思議、抵抗もなく刺さってしまった。が、集中を切らすとそこで止まる。


「刺さった・・・・・・」


 リーアも唖然とした表情である。


「コレが魔法だよ。多分・・・」


 曖昧にそう答えるしかない。


「魔法?これが?」


 疑問形の返答が返って来るが仕方がない。魔法とは、チューニビョーと同じような物語ばかり聞いて来たからだ。


 ファイヤーボールだとかアイスアローだっけ?そんな物語や英雄譚が語られている。


 もちろん、その英雄譚ではデッカイ巨人を倒したとか、常人では振れない大剣を扱うとかいう話は普通にある。

 当然、聖剣だとかいう剣で鉄より硬いドラゴンの鱗を両断したとか。


 しかし、実際の魔法?魔術?と言う奴は良く分からない。教会の神官だとか王宮の魔術師が使うという話だけが実しやかに噂されているだけ。


 公に魔力の扱い方や魔法というモノをどうやれば扱えるかは知られてはいないのが実態だ。疑問に思って当然。


 ただし、ロックボアの皮にしても、サーベルラビットの牙にしても、常識では考えられない事になっている。


 何で魔物だからと動物の皮がその辺の石より硬いんだ?


 何で魔物だからと動物の牙がよく刃を研いだナイフよりも切れ味が良いんだ?


 それは魔力という答えになっている。魔力が皮や牙を強化しているのだと。だったら人間は?


 これが不思議な事に、これと言って特定の事が出来るわけではない。しかし、魔法石という教会にある透明な石に触れると色と光の強さで魔力を測る事が出来る。


 と言っても、魔力を測るのは神学校や王立学校へ入るためにお金を払ってなのだが。


 こんな僻地だと実際に見ることは無いが、魔力測定は一種のセレモニーなので公開で行われている。王都や主要都市へ行けば年に一度くらいはお祭りの一環として見る事が出来る。


 もちろん、勇者や聖女のジョブを持つ人間が魔法石をぶっ壊したり強い慈愛の光をあたりに満たしたって話は聞かないから、どこまで本当かは分からないってのが本当の所だったりする。


「多分ね。串に魔力を送って石より硬くしてるんだ、きっと」


 そう言うと、リーアは石から串を引き抜いてまじまじ見直し、もう一度刺した。


「魔法かぁ~」


 ま、この村の教会なんて、神官が常に居る訳でもない。年に一度はやって来るだけの状態だから、本当の事は分からん。


 

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