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村へ帰還したので交易の交渉をしてみた

「ガエル!リーア!」


 そう声を掛けてきたのはロイカだった。


「心配したぞ。お前たち」


 そう言われるのも仕方がない。


 結局、7日程度で帰って来る筈が10日以上もかかっているのだから。


 エルフたちに会わなければ食料も尽きている計算なので心配されて当然。


「心配かけてすまない」


 そう言ってロイカに声を掛けるが、その視線は俺たちの鎧とついて来たエルフたちに注がれた。


「その鎧と、そっちは誰だ?」


 少々の警戒と大いなる好奇心がその眼にはありありと浮かんでいた。


「ああ、彼らは山を二つ超えた向こうにある川岸の人たちだ」


 森に棲む人たちではあるが、実際には大山脈の向こうから流れる川沿いのため、実際には北方の魔人と言う事になる。


 ロイカたちは興味津々で俺とリーアの鎧を見て、エルフたちを見る。


「山の向こうに川があるのか」


 そう感心する者。


「で、その鎧は何だ?」


 俺たちの鎧に興味を抱く者。 


 彼らと共に久しぶりに村へと帰ると長老たちの元へと直行した。


「ほう、山二つ向こうに大河が流れておるのか」


 どうやら長老たちもその事実は知らなかったらしい。


 川は大山脈の間を縫って流れており、そこから大山脈を抜けて、南部へと出るらしいのだが、ガリシニア王国へは流れて来ていないとの事。


「ガリシニア王国も海に面してはいるが、山の向こう?確か森がずっと続いていたはずだ」


 と言う。


 しかし、エルフたちにとっては、川を遡上して山越えをするよりも簡単に平野へ出るルートだという話なので、もしかしたら繋がっていない海なのかも知れない。


 二ホンの知識もそう言っている。地中海世界にとって北海なんて遠い異世界みたいなモノだって。


 そして、話しは俺たちの鎧に移る。


「お前たちの鎧は何だ?」


 そう聞く長老たちに、これはジャイアントベア討伐金だと伝えた。


 エルフの国の貨幣がこちらで使えるかどうかわからなかったので、現物で何かできないかと見ていたら、俺たちがエルフほどには魔法が使えないことから、このような魔力による補助が可能な鎧の製作になったそうだ。


「ジャイアントベアか。確かにアレの討伐ならば、相当な討伐費が必要だろうな」


 ヴィントリべレの槍と矢で簡単に仕留めはしたが、本来は狡猾な魔獣で、普通の槍や矢を受け付けないのだから、賞金も高く設定されている。あのジャイアントベアもエルフでは無いと甘く見ていたから討伐が簡単だったのかもしれない。


 さて、そんな話をして、ようやくの本題である。


「で、その者たちはなぜ、わが村へ来たんだ?」


 その問いに答えるのはものすごく簡単だ。


「オサギの牙イタ、村では獲れん」


 と言う話だ。


 ここから山二つを超える間に大きく植生が変わって、出てくる魔獣や獣も変化していく。


 ヴィントリべレは空を飛ぶからどうか分からないが、サーベルラビットやロックボアは二つ目の山の麓あたりから向こうには居なくなる。


 そして、向こうで討伐した草食ラーナは二つ目の山を越えると見かけなくなる。


 どうやらあのあたりが生態系の境界であるらしい。


 その為、わざわざ数日掛けて狩りをするという習慣がないエルフたちにとって、サーベルラビットの牙と言う素材を入手する手段がない。


 そして、こちらでは普遍的に出てくる魔獣なので、対価さえ払ってもらえるならば引渡す事が出来る素材だ。


「サーベルラビットの牙か。その二人ではないが、たしかに、異国のカネは受け取っても使い道がない。なにか牙と交換できるものはあるだろうか」


 そう言う話になるのは当然だろう 


 その話は俺も考えていた。


 農業に不適なこの村ではマトモに麦がとれない。必然的に町へ素材や毛糸を売りに行き、その売却金で麦を買い込むことになる。


 と言っても、素材や毛糸を売ればそこから税を引かれる上に、食料を買えばまたそこからも税を引かれる。


 結果的に村へ持ち帰れる食料は少なくなってしまう。


 その事を知っていたので、越境貿易をして脱税してしまえば丸儲けじゃね?と考えた次第だ。


 そして、コメに余裕がありそうなので、牙と米の交換を既に提案していた。


「そのコメと言うのは麦の替わりになるのか?」


 そう疑う長老にコメを見せる。


 当然だが、調理前のそれは食えるわけではないので、コメと麦の違い以上のことは分からない。


 そんな頃合いを見計らって、リーアが炊いたコメとエルフの村風にマギアフーンの肉を焼いてタレで味付したものを出す。


「ほう、これがコメか。麦とはまた違う食味だな」


 そう言って食べる長老たち。


 どうやら、コメと牙の交換という事で話はまとまりそうだ。


 そしてもう一つ。


「あのウマゲな革と鉄とカワズの革を使えば、山越えも狩りもテンマイで」


 と職人が俺たちの鎧を売り込みにかかっている。


 どうやら職人もあの鎧が気に入ったらしい。


 ロリが着ていた大鎧と言う奴は戦闘専用の鎧で、防御力も高いが、なにせ大きく重いので魔力も使うらしい。

 対してロックボアの革を使えば、狩りや長距離移動での必要十分な防御力を持ちながら、圧倒的な軽さを実現できるという。


 ただ、エルフたちにはあまり必要が無いので、俺たち向けに作れば商機もあると見込んでやって来たらしい。


 たしかに、魔力を使わずともラーナの革の伸縮性と鉄の骨格だけで随分負担は軽くなった。長距離移動だけを考えるならば、大した魔力消費も無しに荷運びも出来る事は、俺たちが実証済みだ。


 長老たちも興味があったのか、いくつか作って貰うように依頼している。


「村の者たちの魔力によって使える鎧が変わるだろう。村人に合うモノを少々作ってみてはくれまいか」


 職人も、来る途中に食べたマギアフーンの味を思い出したのか、マギアフーン1羽で請け負うらしい。




 

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