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魔力にも相性がある事を実証してみた

 結局、もう一日かかるというので、ロリに付き合って弓を射る事が多かった。


「この矢はどこの木で作ってるんだ?」


 不思議なのが、魔力で矢じりや矢羽根が出現する魔矢の材料だ。


「北。山の向こうだ」


 いくらか覚えてくれた言葉によって教えてくれた。


 どうやら山脈の向こうには魔法世界が広がっているという事らしいな。


 魔力があるのに使えない俺たちとは大違いと言う事か。


「カワズや!キヨンデ」


 誰かがそう言って射場に入って来た。


「かわず?」


 俺とリーアにはよく分からないが、ロリがその言葉に反応して飛び出していく。


「ジャイアントベアみたいな魔獣か何かかな?」


 というリーアの言葉に、なるほどと思い、俺たちも後を追う。


 追った先は、沼であった。


 正確には整備してコメを育てている区域の外。


「コメ食いんキタンかの」


 集まっていたうちの一人がそんな事を言っている。


「この辺りのラーナって草食なのか?」


 俺が近くにいた人に来てみたが、分からないらしい。まあ、完全に言葉が違うもんな。


「カワズ、コメ食う?」


 と聞いてみると、どうやらそうらしい。


 草食のラーナって、俺たちの村周辺じゃ聞いたことがない。


 もちろん、大きさも。


「あの大きさで草食ってのが信じられないね」


 リーアもそう言う。


「だよな。人を丸呑みできそうだ」


 そう、デカイ両生類である。


 そうこう観察しているうちに攻撃が始まったようだが、どうも矢が効いていない。


「凄い防御力だね」


 リーアが驚くのも無理はない。


 魔矢を弾いて?逸らしているのだから。


「あ、ロリちゃんがあの爆発矢を射たよ」


 妹の活躍を見る姉がそう喜んでいるが、


「え?なんで爆発したのに無事なの?」


 非常に残念な事に、あの爆発すら効かない相手らしい。


「ハガイワ!」


「ジョンナラン!」


 そんな叫び声が聞こえてくる。


「イネイネ!」


 稲の育つ水田の前で何やら稲に向かって呪文を唱える人までいるが、一向にらちが明かない。


「ヴィントリべレの矢じりならいけるかも?」


 リーアがそう言って、俺の矢を持ち出して番える。すでにリーアの矢はジャイアントベアに撃ちこんで失くしているからな。


 まあ、これで終わりだろうと暢気にリーアを見ていたのだが。


「うそ、弾かれた?」


 それはまるで徹甲弾が傾斜装甲を滑るように弾かれていた。


 表面の粘性か何かか?


 ちょっと不思議に思ったが、ふと、ある事を思いだした。


「そう言えば、ヴィントリべレの盾、サーベルラビットの牙で傷が付いたよな」


 そう言うと、リーアは良く分かっていないらしい。


 まあ、もしかしたらという思い付きだから自分でやってみようか。


 サーベルラビットの矢じりでもって果たして貫けるのだろうか?


 矢を番えて、イマイチどこを狙えば良いのか分からないが、柔らかいであろう腹を狙ってみる。


「刺さった!」


 リーアがそう言いながら、自分も矢を番えて放った。


「え?なんで?」


 が、リーアの矢は刺さらなかった。


「魔力を流せばいけるよ」


 そう言って二射目を放つと、左前足の付け根辺りに刺さった。


「私も!」


 そう言ってリーアが放った矢がのどを貫いた。


 事態を察したロリがやって来た。


「何で、イケるん?」


 リーアにそう聞いて、これを使えばよいと、矢を分けている。


 半信半疑で受け取ったロリが矢を番えて、矢が命中し出したことで余裕が無くなったラーナが跳び上がった時に腹に命中した。


「あ、メゲタ」


 どうやら急所だったらしく、そのまま落下して動かなくなった。


 ロリはリーアにドヤ顔をするとラーナへと走っていく。


「さすがだね。ロリちゃん」


 リーアもその姿を姉の目で見ているようだな。


「でも、なんでサーベルラビットの矢じりが弾かれなかったんだろう?」


 と、俺を見て来た。


「ヴィントリべレの盾に傷が付いたって事は、魔力の性質か何かで相性があると思ったんだ。その通りだった」


 そう、ヴィントリべレとサーベルラビットではどうやら魔力的なナニカが違うようだ。と、二ホンの知識が囁いていた。実はそれだけの話で、俺にも詳しい事は良く分からない。


「魔獣によって倒せる倒せないって相性があるのかな?そう言えば、ヴィントリべレにもサーベルラビットの牙って効果があったね」


 ちょっと適当で理解されないかと思ったが、納得してくれたらしい。


「ガイナわ」


 そんな事を言いながらラーナに集まるエルフたち。


 あれだけ矢を弾かれたのだから、どうする事も出来ないだろうと見ていたら、鍬のような道具で表面のドロドロ、きっと粘膜だろうそれをこそぎ落としてナイフで皮を切り出した。


「アイツの固い防御って、実はあのドロドロ粘膜だったのか」


 なぜか、二ホンの知識で流体装甲なるワードが飛び出してきたが、何のことかよく分からない。


「ねえ、あれだったら水か油掛けて粘膜洗い流したら弱くなるんじゃないかな」


 などとリーアが言っているが、頭の中に二つのボールを近づけて流体装甲を剥がすというイメージが浮かんできた。どうやら失敗だったらしいが。


「うまくいかないと思うぞ。そもそも、ラーナって水の中泳ぐんだから、水じゃ洗い流せないだろうしな」


 リーアもそれはそうかと納得している。


 そう言えば、解体してどうするのかと思ったら、皮は加工できるし、肉も美味しいらしい。


 え?食うの?と思ったが、実際に食べてみるとおいしかった。マギアフーンに近いな。両生類なのに鳥肉みたいなのはなぜだろう? 


 

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