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公爵様、地味で気弱な私ですが愛してくれますか?  作者: みるくコーヒー


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hturT 話51第

「申し訳ございません、アレクセン様。」


 ティミリアの元へ1人で赴いたジェラルは帰ってくるなり涙をこぼしながら俺に謝罪をした。


 今日も俺はティミリアの家を訪問するつもりだったが、どうしても1人で行かせて欲しいと懇願するジェラルに仕方がないと許可を出した。


 何かをティミリアに話したかったのだろう。確かに、俺がいては彼女に会うことすら儘ならない。


 ジェラルは彼女の家から戻ってきて、彼女にも話したことを俺にも話した。


 ただ、俺にはどうしてそんなにも自分を責めるのか理解し難かった。


「僕が悪いんです、どんな処罰でも受け入れます。」


 グスッと鼻をすする音が部屋に響く。


「ジェラル、俺には何故お前がそんなにも謝るのかわからない。」

「……え?」


 ジェラルはきょとんとしながらこちらを見た。予想外の言葉に頭が追いついていないようだ。


「伴侶は誰でもいい、とお前に全て任せていた俺に責任がある。勿論、強引に割り込んだことは褒められたことではないが婚姻が決まりかけていた相手方の家はすぐに別の家と婚姻が決まった。特段咎められる行為ではないだろう。」

「……調べていらっしゃったのですね。」


 ジェラルが力なく笑うのを見て「当たり前だ。」と言いながら俺も笑って見せた。


「とにかくだ、今回のことについてお前は少しも気に病む必要はないし謝罪もしなくていい。ティミリアは結婚してからの俺の態度や言葉に対して怒りを示しているのだ。これは、俺とティミリアの問題だ。」


 しまった、また冷たい言い方になってしまったと発言してから気づく。

 もっと考えてから言葉にしなければ、とティミリアの一件から気にかけていたはずなのに。


 だが、そんな心配とは裏腹にジェラル安心したような表情を浮かべていた。


「やっぱり、アレクセン様はとても優しくて、素晴らしい方です。」

「な、なんだ急に。」


 唐突に褒められて俺は狼狽する。


「確かにアレクセン様は言葉をそのままに伝えてしまいます。だけど、それは嘘がない証拠で、もしも2人が歩み寄れるのなら幸せな未来が築けると、そう思ったのです……。」


 俺とティミリアが歩み寄れたならば。

この先があるのなら、俺は努力を欠かさないと誓おう。


 母の言葉を思い出すたびに、心に呪いのように刻まれていった。そして、いつのまにか人との関係を自分から遠ざけていた。必要以上に誰かと関わることを是としなかった。


 単純にそれは、ただ自分を守りたかっただけのように思う。

 これ以上他の人を傷つけないように、それ以上に自分が傷つかないように。


 そんな俺を前に、怯えて震えていた彼女が徐々に壁を越えてくる。そんな彼女を見て俺も少しずつ壁を壊そうとしていた。


 だけれど彼女自身、初めから高くて厚い壁を隔てていた。彼女は最初から自分自身の壁を越えようとしはしなかったし真に俺を壁の中に入れようとはしていなかった。


「ジェラル、明日のティミリアへの手土産を見繕ってくれるか?」

「はい! 喜んで!」


 今度は、俺が彼女の壁を越える番だ。


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