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公爵様、地味で気弱な私ですが愛してくれますか?  作者: みるくコーヒー


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ssentiW 話11第


 俺とティミリアは、友人であるロビンズ・アルメリアの家が主催するパーティーに来ていた。


 会場に入る前にロビンと少し話をしたが相変わらず変わっていなかった。

 ティミリアに友人を紹介することが出来て良かった。


 きっと俺には友達がいない、と思われていたことだろう。


 この会場には俺の友人がもう1人いて、今俺はティミリアを休憩させて、1人でその友人を探し回っている。


 ランはティミリアに会いたがっていて、しつこく会わせろと連絡を寄越してきた。俺が結婚したことがどうにも面白くないらしい。


 ティミリアに俺の昔の話でも吹き込むつもりだろう、あいつは昔から性格が悪い。


 ただ、中々会場でランを見つけ出すことが出来なかった。

 今日は諦めるか、と思っていたところにポンポンと肩を叩かれた。


「ご機嫌よう、アレクセン。」


 振り返ると、ニコニコと笑みを浮かべながらこちらを見る女性がいた。

 ラン・ネメリム・ホーンベール伯爵夫人……俺の友人のランだ。


「ラン、随分探したぞ。」

「あら、貴方が私をそんなに熱心に思ってくれているなんて、知らなかったわ。」


 コロコロと愉快そうに笑う彼女に、俺はムッとした表情で返す。

 相変わらず、言い回しが癪に触る女だ。


「お前がしつこくティミリアに会わせろと連絡を寄越すからだ。」

「当たり前でしょ、貴方の数少ない友人に伴侶を見せないつもり?」


 ロビンもランも"数少ない"とわざわざ言ってくるあたり意地が悪い。


「ここは騒がしいわ、外で話しましょ。」


 ランがそう言ってバルコニーの方へ歩き出すので俺もそれを追った。


 ティミリアを待たせたくないので、あまり長く話し込むつもりはないが、ランの方は話したいことがあるらしい。


「会うのは何ヶ月ぶりかしら?」

「半年くらいじゃないか?」


 俺たちは示し合わせて会ったりはしない。パーティーや何かの機会で偶然会うくらいの頻度でしか会わない。


「全く、こっちが連絡しないと貴方はなーんにも音沙汰がないんだもの。ロビンだって手紙の一つくらい寄越すわよ。」

「他のやつらはそうじゃないだろう?」

「みんな連絡くれるわよ! 貴方だけ!」


 ランの憤慨している様子に、昔と変わらないなと思いながら俺は懐かしさに笑ってしまう。


 ランも懐かしさを感じたのか、ふふっと笑った。


「あ。」


 俺はランの髪をじっと見つめる。

 多分、ゴミなのだろうけれど確証が持てなくて顔を近づけてみる。


 ゴミだ、と分かって俺はそれを取るとランは「ゴミでも付いてた? ありがとう。」と平然とお礼を口にした。


 もしもティミリアだったら、顔を赤くして恥ずかしがるだろう、と何故だが彼女のことが頭に浮かんだ。


 それから、彼女が今近くにいたような気になって、ふと目を向けるがそこには誰もいなかった。


「とにかく、私は貴方に言いたいことがあるのよ。」


 ランの声のトーンが変わった。


「結婚式もなし、パーティーも開かない、一体どういうつもりかしら?」


 やっぱり始まった。

 ランの小言はうるさいんだ。


「ティミリアの負担になることはしたくないんだ、彼女とは恋愛結婚をしたわけじゃない。」

「それは貴方の理屈よ? 女はね、周りに自分が幸せだって見せつけたいのよ。」


 ランは腕を組んで、ふんっと口を尖らせる。


 こんな口うるさい女とよく結婚したな、と俺はつくづくホーンベール伯爵に感心した。


 俺は無理だ。


「アレクセン、貴方はいつも余計なことを言ったり、かと思えば伝えるべきことを言葉にしなかったりするわ。」


 そうだろうか、と俺は考え込む。

 俺は知らないうちにティミリアに余計なことを言っていたのだろうか。伝えなければならないことを伝えていないのだろうか。


 いや、その事実は俺自身わかっていたはずだ。昔から嫌というほどわからされてきた。


「私やロビン、貴方のことを理解している人たちならそれでも構わない。だけど彼女は? 貴方の何気なく発した言葉一つで苦しんでいるかもしれない。」

「……わかっているさ。」


 ランは俺をじっと見てから、ふぅと息をついて表情を緩める。


「他人の私がとやかく言うことじゃないのはわかってる。ただ、友人として心配くらいしたいじゃない?」

「それも、わかってる。」


 ランは純粋に俺とティミリアのことを心配してくれている。次々と寄越してきた連絡だって、何か力になりたいと思ってくれていたのだろう。


「私、そろそろ行かないと。」

「ティミリアに会わないのか?」


 ティミリアに会わせるためにランを探していたのに。

 ランは申し訳ないという表情を浮かべた。


「今日は旦那に無理言って来たから、早く帰らなきゃいけないの。こんな日に具合を悪くするなんて信じられないわ。」


 そんなことを言いながら、ランはホーンベール伯爵ととても仲が良い。


 俺とは違って2人は恋愛結婚だった。

 ホーンベール伯爵は俺たちが学園に通っていた時の2つ上の先輩だ。学生の時から2人の雰囲気はとても良かった。


「伯爵は大丈夫なのか?」

「ただの風邪よ。まあでも、寂しがってるだろうからすぐに帰るわ。」


 ランは、じゃあと俺に手を振り去っていく。俺も軽く手を振り、ティミリアの元へ戻ろうと室内へと入っていく。


 大分、待たせてしまった。

 以前のように何処かへ行ってしまっていないだろうか、と少し不安になりながら彼女の元へ足を進める。


 ティミリアは椅子に座っておらず立っていて、今まさに椅子に座るというところだった。


 俺はティミリアの腕を掴む。

 ティミリアは驚いたように振り向いた。


「すまない、遅くなってしまった。」

「あ、いえ……。」


 ティミリアは俺の顔を見ずに視線を逸らしていた。やはり、遅くなってしまったことを怒っているのだろうか。


「ランと会えたのだが、もう帰らなければならないらしく連れて来られなかった。」


 俺の言葉に、ティミリアは何も言わなかった。特に何の反応も示さない。


 怒っていても仕方ない。

 しばらくの間放置してしまったのだ。


 しかし、椅子を立っていたということは何処かへ行っていたのだろうか?


 ……いや、単純にグラスを持っていないので返しに行ったのだろう。


 そうして俺は、そのことを特別問題視せずに頭から忘れ去った。


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