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公爵様、地味で気弱な私ですが愛してくれますか?  作者: みるくコーヒー


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tneserP 話5第


 何人かの従者を連れ仕事で少し離れた街まで来ていた。そこは海が近く、海産物が特に名産だった。


 俺は頭を悩ませていた。

 妻であるティミリアへの土産についてだ。


 仕事で少しの間、家を空けることになったのだが、遂に出発の日まで言葉を交わすことが出来なかった。


 どうして、あんなにも俺を避けるのだろう。俺が何をしたと言うんだ。


 ジェラルは土産でも買って帰れば、きっと機嫌を治すだろうというのでそれを試みているのだが、一体何を買えばいいのか。


 今まで女性にプレゼントをあげたことなど一度も無かったので、俺には何をあげれば喜ぶのか全く見当が付かなかった。


 特産である海産物でも贈れば喜ぶだろうと思ったが、ジェラルに凄い勢いで反対されてしまっては諦めるしかないだろう。


「アレクセン様、奥さまへの贈り物はお決まりになりましたか?」

「いいや、全く。」


 ジェラルに声をかけられ、俺はそれに正直に答える。


 そういえば、依然ジェラルがティミリアと楽しそうにガーデニングをしていたな。その時、レミーエに彼女の好きなものを聞いたような気がする。


「ジェラル、花を贈るのはおかしいだろうか。」

「それは、とても名案だと思いますよ。」


 きっと、ジェラルは答えをわかっていて言わなかったのだろう。俺自身が決めるべきことだからか。


 とにかく、贈り物は決まった。

 あとはそれを買うだけだ。


「……どの花がいいのだ。」


 花屋に来るが、たくさんの花があってどれが良いのかわからない。


 黒いバラなんか珍しくて良いのではないか、と手を取ってみるが「黒いバラなんてダメですよ!」とジェラルに反対される。


「何故ダメなんだ。」

「黒いバラの花言葉はあまりいい意味ではありませんから。」


 なるほど、花言葉か。

 そんなことまで気にしなければならないとはめんどくさい。花なんて綺麗ならば何でもいいじゃないか。


 半ば面倒になりながら花を見続ける。

 名産、という文字が目に入った。

 ピンク色の花で、どうやらこの土地の名産品の一つであるらしい。


「ふむ、土産といえば名産品に限る。」


 俺は花屋にその花でブーケを作らせる。


 喜んで貰えるだろうか、と心配しながら彼女の笑った顔を思い浮かべた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おかえりなさいませ、公爵様。」


 ティミリアが腰を折り、俺を出迎えた。こうして面と向かうのは何日ぶりだろう。


「出迎えご苦労。」


 そう言いながら、花を渡すために彼女の前まで歩いていく。


 彼女が頭を上げる。

 前を向いたところで一瞬停止し、それからこちらを見た。


 パチリと目が合う。


 久しぶりに近くでティミリアの顔を見た。


「あ、え?」


 ティミリアは驚いているようだった。


 俺はというと、花を渡そうかと迷っていた。もしかしたら拒否されてしまうかもしれない、と思うと中々差し出すことができない。


 贈り物など慣れていないことが、ここで仇になってしまった。


「こ、公爵様?」


 声をかけられ、再び彼女の目を見る。

 いや、とにかく渡すべきだ。それで彼女は俺を避けなくなるかもしれない。


「君に。」


 俺はそう言いながらブーケを差し出した。


「訪れた場所の名産の花らしい。君は花が好きだと聞いたので、土産に。」


 ティミリアは、ブーケを数秒ジッと見つめ、それからゆっくりと柔らかな笑みを浮かべた。


「綺麗……。」


 ティミリアが俺の手からブーケを受け取る。


 その表情は、俺が頭の中で思い浮かべたものと一致していた。

 笑ってくれたことに、何だかこちらが嬉しさを感じる。


「ありがとうございます、公爵様。部屋に飾らせて頂きます。」


 ティミリアはこちらを見て感謝の意を述べた。


「喜んで貰えたのならば、良かった。」


 俺は贈り物が成功したことに満足していた。ティミリアに言葉をかけて、横を通り過ぎ自室へと向かい歩き出した。


「奥さま、喜んでいらっしゃいましたね!」


 ジェラルが後ろからパタパタと走り寄ってきて俺に声をかける。


「そうだな、お前のおかげだ。感謝する。」


 俺がそう言うと、ジェラルは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 こいつは良く出来た従者だ、と思いながら優秀な部下を持てた自分の幸運さに感謝した。


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