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コンテニューから始める最弱勇者  作者: 霜月刹那
一章
5/10

気がつくとそこは懐かしい場所だった。幼い頃からのお気に入りで、町全体を一望できる丘の上。見慣れた町並み、鼻に抜けていく緑と潮の香り。そこは紛れもなく引っ越す前に住んでいた田舎町だった。突然の事で頭が追いついていけず、今の状況に混乱する。先程まで異世界にいたはずなのに今は懐かしい故郷にいる。だが、その頭に残る違和感は段々と薄れて行った。まるで今自分がここにいるのが当然かのように。


辺りを見回す、あの頃と変わらない風景に少しだけ目頭が熱くなる。親の都合で都会に転校してきた事をきっかけに俺はボッチになった。田舎に住んでいた頃は友達も多かったが、今は友達と呼べる存在なんて居ない。最初の頃は田舎からの転校生ということで珍しがられて、結構話はかけられていたが慣れない都会で上手くやって行ける訳もなく結局友達を作ることはできなかったのだ。そんなことを思い返していると、突然後ろから声をかけられる。


『久しぶり、カイトくん。元気だった?』


振り返るとそこには茶色がかった髪を後ろで一つ縛りにしている俺と同い歳くらいの少女がいた。その声はとても懐かしく、二年前と変わっていない優しい声だった。その声のせいか、突然話しかけられたのに驚くことはなく自然と相槌を返せた。


「久しぶり、雛。元気っちゃあ元気だったけど………」


『けど?』


「えっと……まぁ、元気だよ!」


彼女の名前は奥沼雛(おくぬまひな)。田舎に住んでいた頃の幼なじみであり、俺の初恋の人だ。雛は廻斗の誤魔化すような話し方に少し疑問を抱きながらも廻斗の隣に腰を下ろす。


『学校はどう?友達できた?』


「えっと、まぁ、ぼちぼちって所かな………」


2人の間に風が吹き抜ける。心地よい風。ずっとこうしていたい。そう思ったのか雛も気持ちいいねと呟く。


『………何か、辛いことでもあった?』


「……どうして」


『だって、泣いてるんだもん』


そう言われて気付く、涙を流していることに。ふと下を向くとズボンは涙でシミが出来ている。


「別に……何も辛くないよ………」


それはただの格好つけで、好きな人の前では誰だって格好つけたくなってしまう。自分の弱い所を見せたくない。そんな一心で嘘を吐いてしまう。本当はとても辛い、悲しい。だが、そんなことは口が裂けても言えなかった。心配はかけられなかったのだ。たとえそれが、俺の作り出した妄想の奥沼雛であっても。

雛はじっと廻斗を見つめる。すると何かを察したのか立ち上がり廻斗の後ろに周りそっと抱きしめる。


『無理……しなくていいんだよ』


「無理なんか………して、無いよ……」


いくら努力をしても無駄だった。どれだけ足掻いても、ダメだった。最後の最後で一矢報いたが、そんなものは大したものでは無い。本当に無力で無能な自分に嫌気がさす。


『私は知ってるよ。カイトくんがどれだけ努力してきたか。他の人からバカにされても頑張ってきたこと。だから自信を持って』


「そんな……ことはない………」


『誰も見ていないかもしれない。けど、私は見てるから。カイトくんが頑張っているところ。身を呈してクラスメイトを守ったこと。だから、立って。みんな待ってるから………』


そういうのと同時に背中に感じていた筈の雛の体温も質量も全てが消え去っていく。まるでそこには最初から誰もいなかったかのように。そして涙を拭い、雛を探すが見当たらない。それどころか今までいた丘や田舎の街なんて消えていて、あるのは1つの木製扉だけ。

なぜかは分からない。だが、その扉から目を話すことも背を向けることも出来ず、扉を開きたい衝動に駆られる。

廻斗は何かに取り憑かれるように扉を開けた……。

約2ヶ月間、サボってしまい申し訳ございません。

また創作意欲が湧いてきたので自分勝手ながら連載を再開させていただきます。これからもどうぞよろしくお願い致します。

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