ニュートンの喧嘩相手
仲良くなってきた2人はあの後また金を稼ぐためにクエストに出かけた。
今度は北の門から街のそばにある川を目指した。
そこで中型の魚のモンスターが悪さをしてるので退治して証拠として鱗を持って帰ればいいらしい。
「そんな簡単な依頼だと思ってたんですけどね」
川に着くと先客がいて釣りをしていた。
その先客というのが面倒な奴らで、ニュートンのフローラルとはものすごく相性が悪かった。
「ねぇ、そこをどいてくれるかな?《アインシュタイン》と《シュレディンガー》」
「嫌だね!《ニュートン》にここを渡さないよ!」
「こっちも仕事だから。てか、モートはあおるのにいちいち舌を出さないで」
「いくらボクシーの頼みでも嫌だね」
この状況を見れば分かるだろうが、この3人はなぜか血が騒いで喧嘩を始めてしまうようだ。
これは流石にテスタでも救いようがない。
しかも、3人とも身長は似ている。
つまりちびの男の娘のテスタからすれば全員天敵と言っても過言ではない。
「さて、どいてくれないかなら戦うまでだね!」
「望むところ!」
少し離れて見てるテスタは喧嘩っ早いなぁと思いながら切り株に腰をかけて終わるのを待っている。
そんなテスタが目に入らないままフローラルは小石を浮かせて回収した。
それを見て準備できると判断した茶髪のモートはボクシーに言った。
「あっちは良さそうだ!ボクシー、猫箱の用意を!」
「あいよー」
白髪のボクシーはまのぬけた返事をしてから〈キャットボックス〉を発動して2人を囲うようにして箱を作って閉じ込めた。
それは最初だけ大きくて蓋を閉めたら手のひらサイズになった。
どうやら中は異空間になってるようだ。
「シュレディンガーの猫箱、開けてみるまで結果は分からない。このスキルは開けるか開くまで結果がわからない。終わるまで釣りをしよ」
そう言ってのんびりと釣りを再開した。
その箱は普通に地面に置かれている。
それでいいのかとテスタは心配になった。
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無機質な白い壁が広がる空間に閉じ込められてもフローラルは冷静にしていた。
「アインシュタインは何を使うの?私は重力で小石を撃つけど」
そう言って小石をモートに向けるとニィッといい笑みを返された。
それにフローラルは少しだけビビった。
だって、相手が何をしてくるか分からないのだから。
「ニュートンは引力で動かすつもりだな!なら、こっちは鉄球を1つだけ相手やるよ!」
「はっ?まさかこんなところで加速運動と慣性を使うつもり?」
「よく知ってるな!その通りだ!バレてるみたいだからもういくよ!」
この会話の流れでいきなりモートは鉄球を指で弾いた。
それは天井に向けて弾かれたが、ぶつかって反射して進むにつれて抵抗を無視して加速していった。
「さぁ、加速を続ける鉄球をどうやって止める?」
どこまでも加速する鉄球で勝てると確信したモートはそれが反射する中で笑った。
それをフローラルは簡単に止められると思ってその弱さに呆れた。
「加速する鉄球ね。弱すぎてやる気出ない」
そう言うと両手を突き出して鉄球も含めて全てに狙いを定めてスキルを発動した。
その前にちゃんと自分の重力場を作っている。
「止まれ!」
そう言って両手を握ると全てが止まった。
もちもん、モートも動けなくなった。
「なんだこれ!」
「あれ?知らないの?引力の点を複数にすることで互いが引き合う状況を作れるんだよ。それで私以外を止めた。そう、チェックメイト」
完全勝利状態になったフローラルは終わらせるために小石を発射して、モートの顔の横を通して壁に当てた。
それが決め手になってモートは完全に負けを認めた。
何もできないのに一方的にあと7発の攻撃ができるならもう戦えるはずがない。
「はいはい、降参だよ。負けを認めて帰りますよ」
モートがそう言うと箱が開いた。
それを確認してフローラルは引力の拘束を解いた。
解放されたモートは舌打ちをしてからボクシーの服を掴んで立ち去ろうとした。
その途中で振り返って捨て台詞を言った。
「今回は負けを認めてやる。その代わり、何かあれば呼んでくれ。お前になら力を貸してやってもいい。そして、次に戦うときは負けないからな!」
それだけ言い残して2人で立ち去った。
その状況から圧勝したことを察してテスタはフローラルに微笑んで褒めた。
「お疲れ様。圧勝だったみたいですね。やっぱりフローラルは呆れるほどに強いですよ」
そう言われるとフローラルは少し嬉しそうにした。
それからさっきの連中のフレンド申請が来たので許可した。