ニュートンの命がけのゲーム
翌日ゲームにログインすると、急いで街の広場に来るようにとテスタに呼ばれた。
フローラルは急いでその場に走っていくと、そこでちょうど黒いマンとかローブを着てフードで顔を隠す謎の人物が話を始めようとしていた。
「諸君ら、ゲームを楽しんでいるようだな?だが、楽しい時間もここまでだ」
フローラルがテスタと合流すると、そいつがそんなことを言った。
それに対して周りにいる大勢のプレイヤーはイベント関係かな?と思ってざわついていた。
「先に言っておくがこれはイベントではない。もちろん俺は運営の手先でもない。ただの犯罪者だ」
ガタイのいい体でハスキーボイスを出すそいつの言葉でみんなが困惑した。
その中でテスタはスキルの〈天の声〉でこうなることを言われてたらしく、うろたえることなく睨み付けていた。
「諸君らにはこれから私の提示することを実行してもらいたい。さもなくば、1年後に諸君らは死ぬ」
ガチの目を向けて奴が言うので大抵のプレイヤーが本気なんだと理解した。
実際、ネットが大きく進化した社会ではゲームを使った殺しも可能になっている。
それはフルダイブとかじゃなくても起きる大きな問題として社会で取り上げらるほどだ。
「さて、諸君らの置かれている状況は理解できただろう。ならばその実行してもらう内容について話そう」
そう言った時、ブチギレたプレイヤーが退場覚悟で攻撃を仕掛けた。
《パーシヴァル》の力を持つ彼は槍を投げて犯人に当てようとした。
しかし、それは勢いよく飛んでいたのにも関わらず、犯人の前に立ち塞がる鎧の女によって止められた。
「こんな槍が届くと思うとはな。この《アーサー》の力を持つラベスクがいる限り円卓の騎士は無力だと知れ!」
そう言うと彼の金属の槍を両手で横向きに持って膝に当てて砕いた。
その強力な力に多くのプレイヤーが警戒した。
「ラベスク、ありがたいが出てくるのが早いぞ」
「どうせ演出でこの舞台に呼ぶんです。今のうちに出てもいいと思いますよ」
主犯の文句に対してそう言うと、他の仲間達も壇上に登って主犯の横に一列になるように整列した。
「まったく、我の選んだ連中は大物ばかりだな。だが、そんな大物達を諸君らは倒す必要がある。運営に気づかれないように小細工をして10層までを解放した。その1層ごとにボスとして我々が進行の邪魔をする」
「このお方の言うことに追加です。一層ごとに複数のダンジョンがあり、その中のあたりに我々が1人ずついます。それを倒して10層のこの方を倒せば解放されます。タイムオーバー、あるいは運営か警察に言えば遠隔操作で機器を発火させたり、ネットに繋がれた自動運転の車等で殺します。なんならパーシヴァルのアホに実験台になってもらいますか?」
主犯とラベスクがそう言うと全員が静かになった。
そして、この事件は1年以内に主犯を叩けばいいことが分かって楽に感じられた。
「ラベスクが言ってくれたことに追加だ。リアルに出るのは自由とする。我はこれで自分を含めて死んでもいいと思っているからな。逃げたければ逃げろ。ネットがある限り逃げ場など無いがな」
凄みを含ませて主犯が全プレイヤーに向けてそう言った。
その時、1人のプレイヤーが早速逃げようとしたので主犯が見せしめにそいつを選んだ。
そして、リアルにログアウトしたところで何かを操作した。
すると、空中に映像が流されてそこにはさっきのプレイヤーがリアルで電気を頭に流されて死んでいるものが映された。
「なんだと!」
フローラルは驚いてそう言ってしまった。
「諸君らは賢いと思っていたのにな。まさかこんな愚か者がいるとは、失望してしまったぞ。だが、まだここにいる諸君らは本当に賢い。そんな諸君らは運営や警察にバレないように何も知らないこの場に来ていないプレイヤーにもこのことを教えろ。そうせずに死なせたら諸君らの責任になるんだぞ」
そう言って責任という重い鎖をプレイヤーに付けた。
これで全プレイヤーが来ていない知り合いのプレイヤーに教えることを強要された。
そうしなければ成功率も下がるし、何より何も知らずにゲームを楽しんでる姿が不憫でならないというようなる。
そこまでしたところで最後の言葉を奴は口にした。
「それでは命をかけたゲームを開始する。我々10人を見事倒して1年後より先を生き続けて見せろ!」
そう言うと敵の10人が同時にテレポートしてからログアウトした。
このことは敵が言っていたようにプレイヤー達の秘密事項となった。
この件がおおやけになる日が来るとすれば、それは1年後まで奴らを全員倒せた時だろう。
今回の最悪なショーでテスタが動くことは無かった。
それでやるべきことがこれだと理解してフローラルはニヤニヤした。不謹慎だがただ戦いたいだけだからしょうがない。
そして、みんなこの先のことに不安を感じながらログアウトして落ち着かせに行った。
フローラルもさすがにこの日はやる気になれなかった。






