出会い
月明かりを頼りにとにかく歩いた。
あんなに高いところにあった太陽はあっという間にいなくなってしまった。
道らしい道は見つからず人が近くにいるとはとても思えなかった。
もう既に体力は限界。身体がやたら重く感じる。
脚を一歩前にだすのも苦痛を感じるほどに重くだるい。
このまま誰にも会えず森の中で倒れ死ぬのか。
気持ちが死の恐怖で押し潰されそうになった時、急に視界が開けた。
ようやく森を抜けた。
幸運なことに人が歩きやすいように舗装された道があった。
これは人がいる証拠だった。
道らしい道を歩くことができる、人がいるというのが分かっただけで泰雅は嬉しかった。
空を見上げてみるとそこには見たことの無いような満点の星空。
あまりの迫力に今ある危機的な状況すら忘れてしまいそうになる。
こんな状況じゃなければぼんやり眺めてたいところだが…。
目線を上から正面に戻すとひとつの明かりを見つけた。
「やった!明かり!ようやく人に会える!」
この危機的な状況からようやく脱出できるかもしれないと思わず声がでた。
空腹と肉体疲労、わけのわからない状況におかれた精神疲労によりすでに身体は限界に達している。
脚はうまく動かないが湧き上がる喜びが微々たる力を脚に与え、なんとか動かしてくれていた。
人にさえ会えればこの状況を変えられる。
家に帰る手段もあるだろう。
俺はとにかく走った。
明かりは木でできたログハウスから漏れているものであることがわかった。
人がいる!
これだけで疲労が全て吹っ飛ぶような感動が込み上げてくるようだった。
「すみません!誰かいますか!?道に迷ってしまったんです!開けてもらえませんか!?」
頼むから誰かいてくれ!その気持ちがドアを激しく叩かせた。
何度か叩いた時、ドアが開いた。
「よかった!開けてもらってありがとうございます!気づいたら森にいてようやくここまで歩い…て…」
ドアを開けてくれたのは10歳くらいの女の子だった。
頭にぴょこぴょこと動く犬のような耳とわさわさと動く尻尾がついた女の子だった。
コスプレでもしてるのかと一瞬思ったがその動きには偽物ではない説得力があった。
奥にはその子の両親と思われる男女がいた。
彼らをよく見てみると女の子と同じように耳と尻尾がついていた。
皆、俺をみて驚いた表情をしている。
『+*-^¥」¥・。’#%&!!』
女の子がなにか話した。聞いたこともない言葉だ。
「ここはいったい……」
バタッと俺は倒れた。
極度の疲労と自分が今までいた世界じゃないどこかに来てしまったという現実を突きつけられ、俺はプツリと糸が切れたように気絶した。
2020年1月18日 一章完結。
登場人物紹介を少しずつ書いています。大きなネタバレはなし。
興味があれば是非お目通しください。